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以心伝心:第13章

「麻美さん、誕生日に何が欲しいですか」
 三人で暮らし始めて一ヵ月近くたった一月のある日、守は麻美に聞いた。
 会社の先輩から女性と付き合うコツはイベントを大切にすることだと聞いていたので、守はエリと麻美の誕生日をこっそり調べていた。
 本人に聞かなくても保険証を見ると簡単に調べられた。
 エリは五月、麻美は一月だった。
 本当なら気の利いた物をプレゼントすれば良いのだが、流行やブランドに疎い守は何が良いのかさっぱり分からない。
 手作りの品という手はクリスマスのときに使ったので、また同じでは新鮮味が無い。
 かなり悩んだ末、結局本人へ聞くことにしたのだ。
「私がお金を出すから指輪を選んで」
 麻美の返事は早かった。
 女性がアクセサリーが好きなのは本当なんだ。麻美のように店でたくさんプレゼントをもらってる人でも、やっぱりそうなんだと守は納得してしまった。

 そして、誕生日の直前の日曜日に二人で出掛けることになった。
 さすがに今日はエリも遠慮して付いてこない。
 麻美は守と初めての二人だけの外出にウキウキしている。
 近所のちょっとした買物を除いて、守と二人でお出かけするのは初めてだ。いつもは必ずエリがくっついてくる。
 守は恥ずかしがって手を繋がないので、麻美は自分から腕を組んだ。
 守と二人いると自然と体がムズムズしてくる。
 この手は自分の弱い所を全部知っている。この唇と舌は、超能力者かと思うほど繊細で的確に責めてくる。そして、おちんちんで気が狂うほど気持ち良くしてくれる。
 見た目はどこにでも居そうな冴えない男なのに。麻美はつくづく不思議に思う。
 二人きりだとどうしても守の顔をチラチラ見てしまう。
 そして、ベッドの上の事を思い出して、体の奥がじゅんと潤んでしまう。つい守の肘を自分の胸に当てて気持ち良くなろうとしてしまう。
(ダメ、ダメ。昼間からそんなこと考えてちゃ。守が困っちゃう)
 横ではどうして良いか分からず、守が顔を赤くしていた。

 麻美は六本木か銀座辺りの店へ行こうと思っていたら、守がその前に寄りたい所があるという。
 麻美が言われるがままに付いていくと、着いたのは近くのショッピングセンターだった。
 守はその中にある全国チェーンの宝石屋へ向かった。
 女の店員は麻美を見てちょっと場違いな感じがしたのか一瞬だけ怪訝な顔をしたが、すぐに営業スマイルに切り替わった。
 そりゃ守と自分が一緒に居れば、普通は変に思うだろうと麻美はあきらめる。
 今日はなるべく守に合うような服を選んだけど、どうしても職業柄派手な感じが抜けきれていない。
 守はというとファッションに興味の無い男子大学生かフリーターという格好で、二人は全然似合ってない。
 次の休みには守の服を買いに行かなくちゃ。今までエリは何してたのよと麻美は思った。
「すみません、昨日のうちにここで選んじゃいました。ここでも良いですか」
 守が少し申し訳無さそうに言う。
「守君が選んでくれるなら何でも良いけど、もっと高い所でいいのよ。どうせ私がお金を出すんだから」
 麻美が店員に聞こえないように小さい声で答えた。
「高い店だと緊張して選べないから、昨日の内にここで選んでおきました」
 守が店員へ目配せすると、店員が一つの指輪を出して来た。
 それは結婚指輪に近いようなとてもシンプルなデザインをしていた。シルバーのベースに赤っぽい小さな石が嵌めてある。
 光具合からしてルビーではなくて、多分キュービック・ジルコニアだろう。
 守は指輪を受け取ると麻美の左手薬指にはめた。
 さすがに店員はプロで、一目見ただけで指輪のサイズはぴったりだった。
「ぴったりで良かった。サイズが合わなかったらどうしようかと思ってたんです」
 守がホッとした様子で言った。
 一方麻美は急に胸の内が熱くなって来た。嬉しくて涙が出そうになる。
 きっと守は結婚指輪がどんなものか知らないだろうし、婚約指輪と結婚指輪の違いも知らないだろう。
 左手薬指に指輪をはめる意味について何も考えていないのだろう。指輪は左手薬指にはめるものと思い込んでいるに違いない。
 それにしても守が昨日一人でここへ来て店員と相談しながら指輪を選んでいる姿を想像するとおかしくなる。
 きっとおどおどしながら、しどろもどろになりながら店員に話したのだろう。
 私の事をなんと説明したのか気になる。ちゃんと恋人といってくれたのだろうか。
 それとも、友達だろうか。おそらく守のことだろうから大切な人とでも言ったのだろう。
 この店員はモテない男がキャバ嬢にでも貢いでいると思い込んでいるに違いない。
 くやしいから見せ付けるように守の頭を胸に抱いて言ってやる。
「ありがとう、一生大切にする」
「すいません。麻美さんにはもっと高い物の方が似合うと思うんですが、俺にはこれが精一杯で……」
 守が麻美の腕から頭を振りほどきながら言った。
「いいのよそんな事、気にしないで。貴方に選んでもらえただけでうれしいんだから」
「気に入ってもらえてよかったです。じゃあ次の店へ行きましょう」
 守は店員からケースの入った小さい袋を受け取りながら言った。
「えっ、お金は?」
 守は麻美の手を取りさっさと歩き出す。
「大丈夫です。お金は昨日の内に払っておきました」
「えーっ、お金は私が出すって言ったでしょ」
「そんな、本人にお金を出させたらプレゼントにならないじゃないですか」
「大丈夫なの」
「俺だって一応働いてるんですから、プレゼントを買うお金くらいはあります」
 守は本当に大丈夫だといわんばかりに、胸を張るかのようだ。
 その時、麻美は急に涙がこみ上げて来た。止めようとしても止まらない。目の端に涙が溜まる。
 麻美にだって夜間高校卒二十歳で町工場勤務の男の給料が少ないことくらいは分かる。
 自分の何分の一しか貰っていないはずだ。ひょっとしたら十分の一以下かもしれない。
 その少ない給料から守は三人分の食費を全部出している。
 家賃と水道光熱費を出してもらってるからと、自分で出すと言って譲らない。それに、普段の買物は守の役目なので食品以外の洗剤やトイレットペーパーとかの日用品も守のお金だ。他にも、自分しか読まないからと言って新聞代も出しているし、自分の携帯代も自分で出している。要するにエリや自分からお金を一切受け取らないのだ。
 守の性格からして生命保険にも入ってそうだし、貯金もしてそうだ。
 そんな守のお小遣いがとても少ないのは経済観念が麻痺している麻美にも分かる。
 今まで麻美が男からもらったプレゼントは、いくら高いといっても自由になるお金のほんの一部でしかない。
 それかキャッシングで借りた、血の通っていないお金だ。
 守のお金は文字通り自分で汗を流して働いたものだ、しかも何か月分の小遣いになるのだろう。
 そう考えると、麻美は涙を抑えることができなかった。
 麻美が急に立ち止まり泣き出したのを見て守は急におろおろし始める。
「そんなに嫌だったですか? それ返して別なのにしますか?」
 人の気持ちにさとい守でも、この状況は理由が分からないようだ。
「違うの、嬉し過ぎて涙が止まらないの」
 麻美は何年ぶりかに本気で泣いてしまった。嬉しくて泣くのは覚えていないくらい久しぶりだった。

 次に二人が向かったのはいかにもOLさんが喜びそうな、雑誌に載ってそうな店だった。
 ちょっとお洒落だけど、格調が高すぎて入りにくいということも無い、良くあるタイプの店だ。
 おそらく会社で周りの人に相談するか、何かで調べたのだろう。
 冴えないフリーター風の男とちょっと派手な女の二人組みには場違いな感じがするが、麻美は全然気にならなかった。
 席に案内され、メニューを渡される。それを見た守の目が泳いでいる。こんな店に来るのは慣れてないのだろう。それに思ったより高いと言う顔をしている。
 男女関係についてなら守以上に気が回る麻美にはピンと来た。
 エリがこんな所へ守を連れてくることはないだろうから、この手の店は守にとって生まれて初めてなのだろう。
 予約してから来るとか、事前に料理を決めておくとかは考え付かなかったのだ。
 このままでは守が恥をかいてしまうかもしれない。
 麻美は助け舟を出した。
「今日は私が好きな物を選んで良いかな」
 守が助かったとばかりにコクコクうなずいた。
 いつもの守なら麻美の考えなどはすぐに見破ってしまいそうだけど、今日は舞い上がっているのでそこまで考えられないようだ。麻美には好都合だ。
 守の予算が幾らか判らないが多分一人三千円から五千円の間だろう。
 三千円分の料理だとたいしたものが出てこないので守が恐縮してしまう。
 時間的にこの後もう一軒行ってお酒を飲むつもりなら少しは余裕があるはずだ。
 ここは料理を一人四千円分頼んで、ハウスワインのハーフボトルを一つ。そして、次の店に行くのを止めて、続きは家へ帰ってお酒を飲むことにしよう。
 そうすればお腹も一杯になるし、お財布にも優しい。
 麻美は値段がそこそこでお腹にたまりそうな物を適当に選んだ。

 守は幸せそうな顔をして食べている。普段食べないものなので珍しいのだろう。
 麻美はそれを楽しく眺めながら考えていた。
 今日はいっぱいイカせてもらおう。
 私がやめてと言ってもやめないようにしてもらって、頭がおかしくなるまでイカせてもらう。
 抵抗できないように縛ってもらうのも良いかもしれない。
 気を失うまで犯してもらう。
 誕生日くらいはわがままを聞いてもらわなくちゃ。
 想像したら濡れちゃう……。
 そうだ、守はあんまり飲ませないようにしないと。飲みすぎて元気が無くなったら困る。
 麻美は守を暖かい目で見つめながら、これからのことに想いを馳せていた。

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