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一条流の戦い:第76章

 武志は昨夜香露と抱き合ったまま眠り、朝はとてもすがすがしく目が覚めた。香露はいつの間にか居なかったが、残念な気持ちはなかった。これからは毎週香露と会えるのだ。
 体は軽く疲れも残っていない、武志はウキウキしながら朝の運動をしてシャワーを浴びる。
 武志はお湯を冷水に変え、体の熱を冷ましながら昨夜の事を思い出す。
 それにしても昨夜の自分はおかしかった。今までも何度か黒い気持ちにとらわれたことはあったが、昨夜は違う。真理の時に感じたような相手を苛めたいという気持ちではなくて、自分で自分を制御できない感じだった。
 二晩続けて気を使う女性を相手にした。清佳の時には普通に全力を出せたが、香露の場合、途中で何度か訳が分からなくなり、ただがむしゃらに動いていた。
 清佳と香露に違いがあるのか。
 清佳は年上だし、技術的に先を行っている気がする。先輩というか、大きな目標という気がする。
 それに対して香露は年下だし、技術的に負けていたとしても、ライバルみたいな感じだ。だが、そこに自分でも分からない別の気持ちがあるのは確かだ。香露と一緒に居るとドキドキしてくる。
(ドキドキする……)
(ドキドキ……)
(あっ……)
 そこで武志はようやく自分の気持ちに思い当たった。
 そうか俺の初恋なんだ。
 去年までは修行の為に、好きとか恋とかを封印してきた。そして美咲と出会ったが、美咲とは初恋をしないまま、恋人になった気がする。そして今は恋ではなくて愛の気がする。幸せにしてやりたいし、守ってやりたいと思う。だが、そこにドキドキする感情はなく、暖かくて優しい感情がある。
 香露の場合、一緒に居るだけで、うれしくなったり、ドキドキしたり、感情の波が大きくなる。多分これが本当の恋、初恋なんだろう。
 武志は自分の気持ちの整理がついて安心し、急に晴れ晴れとした気持ちになった。
 この気持ちは心の底に思い出として大切に取っておこう。今はそれで良いと武志は思った。

 もうすぐ真理が迎えに来るなと思った時、武志は突然大変なことに気が付いた。
 真理は昨夜香露が来たこと、香露が同じ班に入ることを知っているのか。
 今でさえ、真理、愛、優の三人の関係は微妙なバランスの上に立っている。そこに香露が加わるとどうなるのだろう。
 香露は年下で、以前は敵で、今度は後輩で部下になるのに、容姿・テクニックのレベルは真理より上だ。すんなり上手くいくとは思えない。
 特に真理の場合、愛と優より経験以外のほとんどで優ると思っている節がある。そこへ色々な面で自分より上の香露が来ると、真理は自分の存在意義をどう考えるのだろう。
 香露にしても真理との最初の出会いはインドネシアでのきつい尋問だった。そんな相手と仲良くすることができるのか。
 武志は浮かれていた気持ちが急に冷めると同時に、自分はなんてバカなんだと思った。

 しばらくして真理が朝食の迎えに来た時、武志はドキッとした。
 この三日間で真理の雰囲気が大きく変わりつつある。
 刺々しさが減り、逆に艶というか妖艶さがぐぐっと増してきている。
 連日の責めで顔には疲労の色が浮かんでいるが、それがいい感じで陰が有るというか、妖しい感じを醸し出している。
 真理が純子化してきているとも言える。逆に純子も若い時は今の真理みたいだったのかと想像するとおかしくなってくる。
 それより、真理の態度からは香露の事をどこまで知っているのか見当が付かない。
 武志は自分から言うべきか悩んでしまう。自分から話してやぶ蛇にならないか。しかし、話さないでいると、後でバレた時に隠していたと思われてしまう。
 色々考えて、香露が班に入ることだけ話すことにした。これは黙っていてもすぐに班員は知ることになるし、班長である自分が一番先に知っていてもおかしくない。
 でも、昨夜香露が来たことは黙っていることにする。一日目の夜に清佳が来たことを真理には話していないし、尋ねられてもいない。それなのに二日目の夜のことだけ話すのは不自然な気がする。というより自分の心の中に後ろめたいことがあり話したくないからだ。
「真理さん、新しい班員の事は、もう聞きました?」
 なるべく平静を装って武志は聞いた。
「はい、さきほど部長から聞きしました。あの亡命中国人ですね」
 真理は見た目とは違い、話し方はまだまだ事務的だ。それにしても亡命中国人とは事実にしろきつい言い方だ。
「そうそう。知ってるならいいんです」
 女同士の関係はなんか怖い気がして武志は話を終わらせようとする。
「そのことで班長に質問が有ります」
(うわぁー、なにー、怖いよー)
 武志は普通の会話の振りをするが、内心はドキドキしていた。脈拍が上がるのが自分でも分かるくらいだ。
「なんでしょうか」
「訓練方法はどうしましょうか」
 もっと何か恐ろしい事を聞かれるのかと思っていた武志はホッとする。
「今まで通りで良いんじゃないかな。真理さんに任せるよ」
「はい、分かりました」
 真理は事務的に答えると、それ以上香露のことについて聞いてこなかった。
 武志はなんとか逃げ切ったかなと胸を撫で下ろした。

 真理は一晩寝て体力が回復したのか普通に朝食を食べている。
 武志は無償にお腹がすいていて、貪るように大量に平らげた。気を持つ女性と体を合わせた次の日は調子が良いが、不思議とお腹がすく。気を生産するのに体がエネルギーを求めているのか。それか、単に凄いセックスをしてカロリーを消費したからかもしれない。
 朝食後は部屋に戻り真理がやってくるのを待つ。
 おそらくこれがこの施設での最後のセックスになる。あとは昼食を食べて帰るだけだ。
 となると、やることはおのずと決まる。
 最後に全てを出し切るのだ。
 インドネシア以来、短い間で色々なことを学んだ。そのことを全て真理にぶつける。今、自分ができる最高のセックスを真理に見てもらう。
 まさに一期一会だ。

 九時をしばらくすぎてから真理が一人でやってきた。
 真理も状況を理解しているのか表情がやや固い。
 武志は真理を抱きしめて言った。
「今日は全部任せてください」
 そして武志は優しいキスをした。
 以前はキスにしても武志は最初はやさしく、それからだんだん激しいものという程度にしか考えていなかった。
 だが、香露、芳玲や清佳からそうでは無い事を教わった。目的意識を持つことが重要なのだ。
 相手にどうなって欲しいのか、そのために自分はどうするのか。
 今だと、真理にリラックスして愛撫を楽しめる状態になって欲しい。愛撫をくすぐったく感じない程度まで性感を高める。その為に、微量の気を流しながら穏やかにキスをして真理の緊張をほぐす。そして自分もそのキスを楽しむ。
 ここで気を流しすぎたり、真理や自分を興奮させすぎてはいけない。次のステップで支障が出てしまう。
 凡事徹底の中にこそ本当の技術向上が隠されている。香露とのセックスを通して武志はそのことを実感していた。
 香露と芳玲の間に細かいテクニックの大きな差は無い。見た目ではほとんど変わらない。だが、トータルでは香露のほうが1レベル上だ。一つ一つの愛撫の精度というか的確さが香露のほうが上でそれが積もり積もって明確な差となって出てくる。
 そういう意味では今までの自分の愛撫は気に頼りすぎ、やさしく丁寧にさえすれば良いと思っていた。
 愛撫は基本中の基本だが、実は奥深いものなのだ。
 急には自分のレベルは上がらないだろうが、大切なことは理解した。これから直していけば良い。
 武志は真理の唇をついばみながら反応を注意深く観察する。
 真理が先走りすぎないように、舌を伸ばしてきても応えずに軽くいなす。そして唇を舌でたどる。
 ひょっとすると唇にも今まで知らなかった性感帯があるかもしれない。微妙にラインをずらしながら舌先で唇を探る。
 すると、唇の表面より少し内側の部分や口角が他よりわずかに感じやすいことが分かる。それはかすかな違いだが知ると知らないでは大きな違いだ。
 こうして武志は真理の体温が少し上がり、頬骨の上辺りがかすかに色付くまで舌を絡めないキスを続けた。
 第一段階はこれで十分だ。次のステップへ進む。
 次は気持ち良いの前段階の心地良いを味わってもらう。体に少しだけ火を付け下準備をするとともに、感じるポイントを探す。
 武志は少しだけ量を増やして気を送ってから、真理の服を脱がせていく。真理の性感が下がらないように、時々唇や首筋に軽いキスをする。
 そして自分も服を脱ぐ。お互い下着姿になったところで再びキスをする。
 肌が直接触れた方が一体感と安心感が増す。それに心地良い。
 武志は真理を連れてベッドに上がった。やはり立ったままだとお互いにどうしても愛撫に集中できない。
 下着を先に脱がせるかどうか悩んだが、まだ早いと判断した。まだ準備段階だ。全部脱いでしまうと感じすぎてしまう気がする。
 武志は感じすぎる部分は避けて真理の体にキスしていく。感じる所は弱めに、感じにくい所はやや強めにキスをして、舌でなぞり、気を流す。そうして真理に心地良くなってもらう。
 それはマッサージで気持ち良くなって眠くなるのに似ている。
 緊張を完全に取り払い、愛撫に集中してもらう。その間に気付かれない程度の火を体中に付けて回る。
 肩から腕、胸元、お腹と口を移動させていく。ここではくすぐったくならないように万全の注意を払う。せっかく夢見心地の状態に入りかけているのに、現実に戻ってきては台無しだ。
 太もも、膝、脛、足へと移動していく。急がず、じっくりと丁寧に愛撫する。ここはいくら時間をかけても問題無い。
 両足まで愛撫が終わったところで真理の顔を見てみると、楽しい夢を見ながら寝ているかのようだ。顔は緩み、胸はゆっくりとかすかに上下している。
 ここまでは上手くいっている。地ならしが終わった段階だ。真理は浮世の雑事から解放され、愛撫のみに集中して快感を味わえるはずだ。
 第二段階はこれでよいだろう。次のステップへ進む。
 武志は真理の感覚が冷めないうちに手早く下着を脱がせ、自分も全てを脱ぎ去った。
 次は我慢しなくて良い程度の気持ち良さを味わってもらう。そして体に本格的に火を付けていく。弱いが深く感じてもらうことで、全てのストレスを吐き出してもらう。
 ここも時間をかけてゆっくり愛撫する。体の深いところから性感を掘り起こしていくのだ。
 武志は再び首に戻り、じっくりと舐めあげる。舌の腹にたっぷりと唾液を乗せ、気と一緒に真理の張りのある肌に塗り込んでいく。
「はぅー……」
 真理の口から軽いが尾を引く長いあえぎ声が漏れる。
 いい感じだと武志は思った。その声に切羽詰った感じは無く。体の底に溜まった物を吐き出すような感じだ。
 武志は自分も真理の首筋を楽しみながら味わう。自分が舐められるのも好きだが、女性を喜ばせるのも大好きだ。一方的に愛撫しているので、射精感を抑える必要も無く、思う存分真理の体を味わえる。
 美味しい、美味しいと思いながら真理の首を舐め上げる。
 その一方で真理の反応を絶対の集中力で観察する。すると真理が望んでいることが何となく分かるようになってくる。
 真理は反対側もやって欲しい時は首を逆に傾け武志をそこに誘導しようとする。武志はすかさず反対側も舌で愛撫する。
 真理が口を突き出しキスを求めると、すかさず口を与え、ねっとりと舌を絡める。
 胸を突き出してくると、こってりと乳房を揉みこんでやる。
 今は真理がストレスを感じないように、武志は真理が望むように舌を動かしていく。
「あぁーーーー……、い、いぃーーー……」
 真理の口からは糸を引くように長いあえぎ声が絶え間なく流れ出ている。体の中に溜まったものを出し切るような深くて長い声だ。
 武志はその声を聞きながら以前の自分がいかに単純であったかを思い返していた。
 基本的に焦らすという方向性しかなかった。それが、香露の相手にストレスを与えないやり方を知り、清佳の緻密な戦略に基づいた絶対的な献身を体験し考えが変わった。
 それまで自分の愛撫については、ほぼ完成形だと思っていたが、そんな事は無かった。まだまだ改善の余地があった。
 今は自分の愛撫に自信が持てなくなってしまった。力の入れ具合、気の流し具合がこれで一番良いのか分からない。自分ができる最高のものを相手に与えたいのに、その最高が何かが分からないのだ。
 分からないということは、自分が納得するまでやりこんで答えを見つけるしかない。
 香露に会って約二週間、武志は一つ大きな壁を突破し、さらに大きな壁に当たった気分だった。

 真理からは変わらず、長いあえぎ声が漏れているが、そろそろ次に移る頃だろう。
 もう腰が持ち上がったり、両足をすり合わせたりしている。体中に火が回り、いつでも燃え上がらせることが出きる状態だ。
 後は燃料と酸素、要するに刺激と気を与えれば、爆発的に燃え上がるだろう。
 そして目一杯感じてもらう。死にそうになる寸前、気を失う寸前まで、感じまくってもらうのだ。
 武志はここまでほとんど手を付けていなかった真理の秘肉に手を伸ばした。そして包皮の上からクリを優しく撫でる。
「あんっ……」
 今日一番の刺激に真理から可愛い悲鳴が上がる。その刺激は疼き始めた子宮から脳まで一気に突き抜けた。
 武志はここぞとばかりに一気に責める。
 片方の乳首を口に含み、真理の首の後ろから手を回しもう片方の乳首を摘む。そして、残った手で秘肉を責め立てる。親指でクリを押さえ、人差し指と中指をずぶりと秘肉に沈める。クリとGスポットを押さえて間の肉をすり潰す。おまけにアヌスへ小指を伸ばす。
 武志は全ての指、舌先から全開で気を流し始めた。
「ああああぁーー……」
 大量の気が怒涛となって真理の体内を荒れ狂った。
 体の一番深いところから掘り起こされていた性感は急激に立ち上がり絶頂寸前の所まで真理を押し上げる。
「はんちょー、はんちょおぉー……、もっと、もっと優しく……」
 突然の快感に翻弄されながらも真理はなんとか意識を繋ぎとめ、武志に訴える。
 少しでも気を緩めたら、たちまち絶頂に襲われそうだ。
「遠慮しないで、何度でもイッてください。真理さんがイクまで止めませんから」
 武志が少しも手を止めることなく言う。
 追い討ちを掛けるように中指をぐっと押し込み子宮口に届かせると、そこにまで気を流し始める。
 武志は片手でクリ、Gスポット、子宮口、アヌスと四ヵ所に気を流していることになる。
 これには真理も堪らなかった。
 今までの武志の相手で気が流れやすい体に作り変えられていた。だが、逆に気に耐えること、限界を引き上げることもできるようになっていた。
 しかし、今日の武志の愛撫は今までの経験を吹き飛ばす威力があった。
 信じられないくらい丁寧な愛撫の後の、強烈な四点責めは真理の強固な意志を持ってしても止めることができなかった。意識を刈り取られないようにするだけで精一杯だ。
「ダ、ダ、ダメ……、ダメです……。イクッ、イキます。もうイキます……」
「今日は好きなだけイッてください。我慢しないで何回でもイッていいんですよ」
 武志が耳元で諭すように言う。
「ダメ、イクッ、ほんとにイキます。イッ、イクぅー……」
 真理は人生最短記録で絶頂まで登りつめた。
 頭がかぁーっと熱くなり、何かが爆発する。目の前では星が飛んでいる。
 勢いが付いていただけに真理の絶頂は大きかった。全身がヒクヒクと痙攣している。
 武志は絶頂の瞬間だけは手を止めたが、真理が落ち着きかけると再び手を動かし、気を流し始める。
「ちょ、ちょっと、ちょっと待って、はんちょー。イキました。もうイキましたから」
「何回でもイッてください。今までの分もまとめてイッてください」
「分かりましたから、ちょっと、待って、くだ、さい」
 武志は真理の言葉を無視して手を動かし続ける。さらに手を揺らし振動を与える。
「待って、待って、待ってぇー……、あ、あ、ああ、ああああぁー……」
 まだ最初の絶頂の波が引いていない真理の体は、再び絶頂に放り上げられた。
「あううううぅーー……」
 真理は歯を食いしばり、体を反らして絶頂を噛み締めた。
 一回目より体の震えは大きく、長く続いた。
 はぁ、はぁ、はぁ……。絶頂の解けた真理は大きく息をして空気を吸う。
 武志の責めは止まらない。キスをして真理の口を塞ぐと、舌で口の中を荒らす。
 そこから先、武志はノンストップで真理を責め続けた。
 真理のイク間隔はどんどん短くなり、最後にはイキっぱなしの状態になる。
「んんんんぅー……、んむむむむぅー……」
 口が塞がれているので、真理の口からはうめき声しか出てこない。体は大きく震え続けている。体は鉄の棒でも入っているのかという感じで硬直している。
 武志は手がつりそうになり、限界が来たところでようやく動きを止めた。
 真理はぐったりしながら、激しい息をしている。
 武志は一瞬だけ息を止め、気を整えた。そして真理の両足の間へ移動し太ももを抱えた。
「はんちょー……、無理……、無理です……、待って、待って、ください……」
 武志の意図を察した真理は苦しい息の中で武志にお願いをする。
「大丈夫。まかせて、最高に気持ち良くします」
 武志は真理の状態、自分の気の残量を冷静に分析し、まだいけると判断した。
 昨日、おとといと真理を責めた時みたいに暴走することなく、とても落ち着いていた。ただ、真理に最高の快感を与えることしか考えていなかった。
 肉棒の先端を秘肉に合わせると、ゆっくりと沈めていった。
 真理の中は心とは裏腹にドロドロに溶けきり、肉棒に絡みついていく。
「んああああぁー……」
 真理の口からあえぎ声が漏れる。もう、声を抑えるとかの状態ではないようだ。
 武志は数回腰を前後させ肉棒をなじませると、遠慮の無い動きに入っていった。
 今の段階はひたすら真理を感じさせる。自分が持てる全ての物を出して、激しい快感を味わってもらうのだ。
 武志は気を全開で流しながら、大きいストライドで腰を動かす。
 Gスポットに目掛けて気を全開で流す。
 肉棒が根元まで埋めきられる度に子宮口を押し上げる。真理の子宮はより大きい快感を貪る為、既に下へ降りてきていた。

「おくぅー、奥がー……」
 真理は経験した事の無い激しい快感に飲み込まれていた。
 今までも武志の相手をすると信じられないくらいの快感を覚えていたが、今日はいつもより一段階上だった。我慢どころの話ではなかった。時々ふっと意識を失いそうになる。それを歯を食いしばり、シーツを掴み、かろうじて持ちこたえる。
 もういつ失神してもおかしく無い状態だ。
 武志とのセックスも回を重ねるごとに順応してきたつもりだったが、甘かった。武志の本当の力はあんなものではなかったのだ。
 真理は自我が崩壊しそうなほどの快感に恐怖さえ感じていた。
 だが、自分では止めることができない。快感にもてあそばれながら、ひたすら耐えた。

 武志は激しく真理を責めながらも、反応や状態のチェックを忘れない。
 もう本当に真理が危ないと思ったところで、一旦動きを止めた。
 そして真理の背中に手を回し抱え起すと、対面座位の体勢になった。
 真理にはもう自分から動く体力は残っていない。武志の体に寄りかかってくる。
 武志は真理のお尻に手を掛け、持ち上げては落とす。その度に亀頭が子宮口を強く突き上げた。
「おおおおぉー……」
 真理の口から、そんな体力がどこに残っていたのかと思うような大きな叫び声が出る。
 子宮口も敏感な性感帯に作り変えられている真理は、独特の苦しくて、深く響く快感に飲み込まれる。
 もう体中が分解しそうだった。絶えず流れる強い刺激に神経は焼き切れ、子宮は破裂しそうなほど熱くなり膨れ上がっている。
 もう自分がイキ続けているのかどうなのかも分からなかった。
 何も考えられなかった。自分が何も考えられないということに気付かないほど、頭の中は快感で埋め尽くされている。
「ああああぁーー……、んああああぁーー……」
 獣のようにひたすら唸り声を出すだけの状態だった。
 武志は真理の最後が近い事を察した。自分も気の残り量が少ない。この三日間でかなりの気を使ってきている。特に清佳と香露に対して使った気の量が多かった。
 武志は最後の仕上げに、ゆっくりと後ろに倒れ女性上位の体勢になった。
 最後は真理に奥義を味わってもらって終わろう。気を全て使いきって終わるつもりだった。
 武志は体の動きを止めた。真理の体を優しく抱き、亀頭の先を子宮口にぴったりと合わせた。
 そして真理にキスをすると子宮口とGスポットに気を流し続けた。
 真理は最初の瞬間こそビクンと体を震わせたが、後はぐったりと武志の体に覆いかぶさるだけだ。
 ただ秘肉だけがヒクヒクと細かい痙攣を続け、肉棒を食い締める。
 武志はひたすら気を流し続ける。真理の頭の中が気で溢れても流し続ける。そして口から気を回収し奥義循環弐を開始した。
 あとは尽きるまで気を循環させるのだ。
 真理の状態にだけ注意を払い、ひたすら気を流し続ける。
 真理の脳細胞の一つ一つと神経の末端まで気が染み込んでいくのをイメージした。
 ただ真理が気を失わないようにだけ注意した。
 体中から最後の一滴まで気を集め、真理に流し込む。そして、本当に気が尽きる最後の瞬間に合わせて精液を吹き上げた。
 ぶしゅぅー……、ぶしゅぅー……、ぶしゅぅー……。
 激しさこそ無いが、長い長い射精だった。大量の精液と共に気も最後まで流しきった。
 口をふさがれている真理からは声も上がらない。その代わり秘肉だけが精液を搾り取ろうとうごめいた。
 武志は精液も気も本当に最後まで出し切ると、真理から口を外した。そして真理を優しく抱きしめた。

 真理は一回のセックスで体力を使い果たし武志の上から動かない。
 武志は肉棒も抜かず、そのままずっと真理を抱きしめていた。
 真理は体中に溢れた気の余韻を味わっているはずだった。それを邪魔しないように、じっとしていた。
 真理の体に反応が戻ってきたのは三十分近くたってからだった。
 ずっと同じ体勢でいて苦しくなったのか、真理がもぞっと体を動かす。
 武志は真理の髪に優しく触れる。脱色とかで痛んでいないのでサラサラで触っていて気持ち良い。
 それからまたしばらくの間、二人は動くことなく、しゃべることもなく、ただ抱き合っていた。
 武志としては自分の持てる全てを出し切ったセックスだった。直すべき点はあるかもしれないが、今はこれが自分のできる最高のセックスだ。
 真理が満足してくれたなら良いのだけどと考えていると、真理が口を開いた。
「班長……」
 あえぎすぎたのか声が少しかすれている。
「班長、今まで生きてきた中で最高でした。部下を堕としてどうするつもりですか」
 真理が冗談を言うような、いや、いたずらをした子供が相手をからかう時のような口調で武志に言った。
「違うよ、色々がんばってくれたお礼に気持ち良くなってもらおうと思っただけですよ」
 武志はすぐに否定した。
「そうですか、ちょっと期待したのに……」
 真理の意味深な言葉に武志はドキッとしたが何も言わず、ただ真理の頭を撫で続けた。

「班長、部長が昼食後にお話があるそうです」
 昼食後真理に言われて、武志は頼子の部屋へ挨拶に行った。今回のお礼を言わなくてはいけない。
 最初考えていたようなハーレム状態ではなかったが、真理の違う一面を見たり、清佳にもう一度会えたりと、内容の濃い三日間だった。なにより香露を自分の班に入れてくれたことにお礼を言いたい。
 部屋に通されると、中には頼子の他に知らない男が一人居た。スーツを着た髪が薄い中背のどこにでも居るような男で、年齢は父親より少し上くらいの感じだ。一見すると単なるサラリーマンだが、普通の人がここに居るわけが無い。その証拠に目には力があり、ただ者ではない事を証明している。
「武志君、こちらが私の上司の室長です」
 頼子の上司ということはかなり偉い人なのだろう。しかし、室長といわれてもどのくらい偉いのか分からない。
「武志君、インドネシアではご苦労様でした。君の活躍には大変感謝しています。どうしても直接会って礼を言いたくてね」
 室長だと言われた男が武志へ丁寧にお礼の言葉を言った。
「いえ、そんな、たいした事はしていませんから」
 大人の男性に褒められることなどほとんど無い武志は気恥ずかしくなってしまう。
「丹波君、慰労の方は十分してくれましたか」
「室長!」
 頼子が室長に咎める視線を送る。
 室長がおっと失礼という顔をする。
「いやあ、すまん、すまん。ここでは下の名前で呼ぶ決まりだったな」
 武志は室長の言葉に引っかかった。
「ちょ、ちょっと待ってください。丹波君て、部長の苗字は丹波なんですか」
 頼子は肯定も否定もしなかった。
「ということは頼子さんは丹家衆の……」
 武志の普段はあまり動かない頭が高速回転を始める。
 丹波。それは丹家衆の一族の名前。遠く平安時代の典薬頭を祖にして天皇家の性に関する事を司った一族。祖父の残した資料によると、たしか丹家衆は女系である。ということは、もしかして頼子部長が丹家衆の長なのか。
 なぜ今まで気付かなかったのだろう。一番最初に接触した隊員の静香も丹家衆がS部隊だと言っていたではないか。久しく丹家衆という言葉が出て来なかったのですっかり忘れていた。
 それで色々なことが繋がって見えてきた。
 祖父も政府の役人ではなく丹家衆の長となら接触を持っていた可能性はある。両者の間で情報交換や密約が交わされた可能性もある。それなら今までの武志への過剰な便宜や、色々な情報を知っていたことの説明が付く。
 今になって思えばS部隊に入ってからは丹家衆の事が一度も話題にならなかった。S部隊こそが現代の丹家衆そのものだったのだ。となると、その責任者である頼子が丹家衆の長でも不思議は無い。
 今は室長がいるので頼子に聞けない。次の機会に絶対問いただすと武志は決めた。
「それで慰労の方は?」
「十分行いました。満足してくれたはずです」
 武志は二人の間に上司と部下以上の親密さを感じた。まさか頼子部長は室長と昔関係があったのか。頼子が丹家衆だとすると、その技を上司に使うことも十分考えられる。
 頼子は隊員ほどでは無いが普通の人よりは美しい。若い時に上司と関係を持っても不思議ではない。上司に丹家衆の力を見せる必要があったのかもしれない。
 武志にも最低限の分別はあった。本人達に直接聞くべき事ではないし、答えるはずがない。
 自分は本当にまだ子供なんだなと武志は思った。

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