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一条流の戦い:第36章

 瞳の誕生日もすぎ、武志は勉強付けの毎日だった。卒論用の研究、ゼミの宿題、編入試験の勉強と睡眠時間を削って勉強した。
 S部隊との訓練も頼子に頼んで一次試験が終わるまで休みにしてもらっている。
 美咲と瞳は勉強の邪魔はしたくないけど、会えないのは寂しいと、日曜日は武志の部屋に遊びに来た。勉強の邪魔をしないように本を読んだり、ヘッドホンをしてテレビを見たりしている。そして帰り際にキスをして、武志のパワーをもらって一週間分のエネルギーにしていた。
 七月中旬になると、それに前期末試験の勉強が加わり、寝る間を惜しんで勉強するようになった。大学受験の時より勉強しているかもしれない。
 なんとか狙った単位は落とすことなく夏休みを迎えた武志に頼子から呼び出しがかかった。
 また、なにか仕事かと思いながら出頭すると、ちょっと意外な話だった。
「アメリカがね、武志君に教官として来てくれないかと言うのよ」
「教官ですか。訓練とかじゃなくて」
「教官といっても、別に一条流を教えろって訳じゃないの。まあ女性を鍛えて欲しいって事らしいわ」
「じゃあ、去年みたいにアメリカ側要員の相手をすれば良いって事ですか?」
「まあ、そうね。こっちとしてはメリットが無いから、私としては断りたかったけど、政治的問題というか大人の事情で断れなかったのよ。武志君としては外人女性の相手ができてうれしいかもしれないけど」
「そんなこと無いですよ、けっこう疲れるし、前の時は大変だったんですよ」
「日程は一次試験の翌日から一週間を考えてるけど、どうかしら。いけそうかな」
「翌日からというのもしんどいですけど。二次試験は面接だけで特に勉強は必要ないですから、大丈夫だと思います」
「じゃあ、向こうにOKの連絡をしておくわね」
「はい。それと、今回も知香さんが一緒にいくんですか?」
「いえ、今回は武志君一人よ。通訳は向こうが用意します」
「ええぇーっ。一人ですか」
「そう武志君一人。心配しなくても去年と同じで危険なことは無いから、楽しんで色々吸収してきて。そして、必ず元気な姿で帰ってきなさい。でも覚えておいてね、あなたは二十四時間監視されている事を。全ての行動は記録されるということをね」

 今回は対決ではなくて、教官として行くので、少しはこちらの言う事も聞いてくれるだろう。
 武志は大きな期待と少しの不安を感じながらも、とりあえず横に置いておいて、勉強に没頭する。
 美咲と瞳の二人は自動車免許を取る為に合宿形式の自動車学校へ行っている。
 二人が居ないので、武志は集中して最後の追い込みに入る。
 二人は編入試験の一週間前に帰ってきた。連絡はメールが来ただけだった。次に会う時は免許を見せると書いてある。
 数日後、二人が武志の家にやってきた。二人とも無事試験に合格して免許を取っていた。
 武志が見せてもらおうとすると、写真が変だからと嫌がったが、半ば強引に見せてもらう。確かにかしこまった二人の写真は、ちょっと変だった。どうして免許証の写真は変に写るのか謎だ。武志の免許も変に写っている。
 二人は合格祈願のお守りを置いて帰っていった。

 そして一週間後、試験の日がやってきた。
 会場は医学部のキャンパスなので、同じ大学といっても通いなれたいつもの場所ではない。
 会場は講義に使う教室が二部屋で、受験生はその部屋の端から端まで詰まっている。昨年は百五十人中五人が合格している。三十人に一人でかなりの難関だ。今年も昨年と同じくらいの受験生が居そうだ。
 科目は英語、生物、小論文の三科目。できるだけの事はやったと、武志は落ち着いて試験に取り組む。こういった時、修行で精神集中の訓練をしている武志は全力を出すことができる。
 半日近くかかった試験が終わる頃には、どっと疲れが出ていた。
 あんまり、ゆっくりもしていられない。急いで家に帰ると、アメリカ行きの準備を始める。準備は前日に徹夜でやろうと、ほとんど手を付けていなかった。
 準備といっても、着替えと辞書と洗面用具だけである、数時間で終わった。他に暇つぶし用の本を何冊か入れる。
 それとアメリカへのお土産は頼子に頼んで、家まで持ってきてもらった。中身は知らないが、ぎりぎりスーツケースに入る大きさだった。頼子のやる事は抜かりが無い。

 出発当日、見送りに美咲と瞳がやってきた。武志の自宅から空港までついて来るらしい。
 ラッシュに巻き込まれないように、少し早めの七時に家を出る。
 頼子によると武志の個人情報は住所・氏名どころか遺伝子情報までアメリカ側に知られていて、武志本人より詳しいらしい。
「武志君みたいに普通に生活している人間をいつまでも隠し通せるわけ無いでしょ。今回の教官派遣依頼もアメリカ側から武志君の本名を名指しで言ってきたわよ」
 そういうことなので、隠す必要無く、二人を連れて空港まで向かう。
 二人とじっくり話すのは一ヶ月ぶりだった。道すがら合宿教習の時の話を聞く。
「路上の時にね、教官がいきなり『ブレーキ』って言うから慌てて急ブレーキしたら、野生のキツネがいたの」
「私も野生の動物見た。生まれて初めて」
「近くにあった牧場で食べたソフトクリームは美味しかったよねー」
「そういえば美咲が他の生徒からナンパされてた」
「ちゃんと断ったよー。瞳も男の子から声を掛けられてるの見たよー」
 二人の話は、しばらく勉強漬けでささくれていた武志の心に心地良く響く。武志は二人の話に相槌を打ちながら、ずっと聞いていた。
 空港に着くと武志は一人で問題なく搭乗手続きを済ませた。
 前回のパック旅行と違い完全な一人旅だが、三回目の海外旅行、一人旅も二回目なので、焦ることなく手続きできた。
 別れ際に二人から旅行安全の御守をもらう。お守りにこんな種類があるのを武志は知らなかった。
「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃーい、おみやげよろしくー」
「気を付けてね」
 武志は二人に見送られ日本を旅立った。

 今回の目的地は前回と違いニューヨークである。アメリカ側は主な部隊が東海岸に、一部が西海岸に居る。それで全体の実務責任者が去年会ったジョージらしい。
 それで飛行機はニューヨークのJ.F.ケネディ空港行きだ。去年と同じ日本の航空会社のビジネスクラスに乗っている。
 大学生が一人でビジネスクラスにいると、さすがに浮いている。だが、体を休めるためには仕方が無い。現地に着くと強行スケジュールが待っているはずだ。武志は周りの視線は無視することにした。
 日本発が11:00、アメリカ着が同日09:30(日本時間22:30)。フライト時間が十一時間半である。
 去年と同じ様に、なるべく寝ないで時差調節をしようとしたが、試験勉強の疲れ、昨夜の出発準備での睡眠不足などで、途中うたた寝をしてしまう。
 空港に着いた時には何度かの仮眠が効いたのか、頭はすっきりして、体は軽かった。
 入国審査、税関は三回目だが、やはりドキドキする。問題なく通過してゲートを出ると、出迎えの人を探す。
 武志がキョロキョロしていると、"Welcome Takeshi"のボードを持った白人女性が近づいてきた。
「タケーシ。ようこそー」
 女性が日本語で武志に話し掛ける。
「通訳兼案内係のブリジットです。どうぞ、よろしくー」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 ブリジットは身長が170cmよりちょっと低いくらいで巨大な胸をしていた。ブラウンの髪、青みがかった灰色の瞳、高い鼻で典型的な白人女性の外見をしている。白人女性の年齢は分かりにくいが二十代ではない気がする。おそらく三十代前半だろう。
 元はスリムだったのだろう体に、いやらしく脂がのり、淫らな空気を振りまいている。
 二の腕はすこしたぷたぷして、腰周りにもたっぷりの脂が乗っている。日本で言うと三十代後半の様な熟れ具合だ。
 派手で色気が溢れる美しい顔をしているので、ひょっとすると元は部隊の要員だったのかもしれない。
 去年の案内係のマイクは憎めない感じで、それなりに楽しかったが、日本語が通じる美人のほうが何倍もうれしい。
「まずは、ホテルに荷物を置いて休憩しましょう」
 荷物を積み込んで、車は空港から市内中心部へ向かう。
「これからの予定を簡単に説明します。今日は時差ぼけの解消の為に、簡単な観光です。明日は朝から私達の秘密基地へ移動します。四日間そこで過ごしてから、またホテルに帰ってきます。そして帰国です。分かりましたか」
 ブリジットがちょっとだけ変な日本語で説明する。
 武志は窓から外を眺めながら去年のことを思い出していた。カリフォルニアの青い空が懐かしい。ニューヨークの空は少しどんよりしている。
 それから世間話をしているうちに車はホテルに到着した。
 そこは武志がちょっと引いてしまう高そうなホテルだった。貧乏性の武志は寝るだけなのにもったいないと思ってしまう。
 当たり前のように、ドアはボーイが開いてくれる。慣れない武志はくすぐったくて仕方が無い。
 チェックインもブリジットにまかせて、言われた所にサインだけする。パスポート上の偽名を漢字で書く。英語で書くと、書き慣れてないのがすぐにばれてしまう。
 宿泊客以外は客室に入るといけないのかもしれないが、通訳という事で許して貰うことにしてブリジットに部屋まで付いて来てもらう。
 チップは去年の出張の時の1ドル紙幣を残しておいたので、それを渡す。けっこうさりげなく渡せたと武志は一人で満足した。こっそりイメトレを繰り返した甲斐がある。
 顔だけ洗うと、部屋を出て、ホテルのカフェで一服した。
 これから一日、ブリジットの案内でニューヨーク観光を楽しむ。
 なるべく定番の所をまわって欲しいとお願いしたので、まずは自由の女神に向かった。
 それから昼食はネイサンズ一号店のホットドッグになった。日本人が何度も早食いチャンピオンになっている所だ。ここで戦ったのかと思うと武志は感慨深いものを感じる。
 ネイサンズは東京にも出店しているので、わざわざアメリカで食べる事も無いのだが、本場で食べるのは一味違うと思い込むことにする。
 昼からも引き続き観光名所を回る。お土産を買い、証拠写真を撮るためだから、行かざるをえない。
 まずはニューヨーク近代美術館に行く。ここのショップでおみやげ用にいくつかの安いグッズを買う。それからマンハッタンで有名なビルを幾つか眺め、そのうち一つに上って景色を眺める。それからタイムズ・スクウェアやブロードウェイなどテレビで見覚えある場所を歩く。
 観光の最後はヤンキー・スタジアムだった。ここで日本人メジャーリーガーが試合をしていると思うと、一人アメリカに来ている武志は、何か同志のような気がしてくる。
 ここで美咲と瞳のおみやげにヤンキースのユニフォームを着たテディベアとピンク色のベースボール・キャップを買う。これなら野球にあまり興味が無い二人にも気に入ってもらえるだろう。
 最初二人へのお土産はティファニー本店で限定品でも買おうかと思ったが、彼女達なら高価な物でなくても喜んでくれるだろうと考え直した。
 それだけ回るとさすがに疲れて武志達は早めにホテルへ戻った。
 お土産を部屋へ置くと、カフェへ行き、コーヒーを飲んで一息ついた。
 夕食はおすすめのレストランがあるらしい。
 日本人がシェフを務める有名レストランだ。そういえばテレビで見た事があるような気もする。
 まだ時間が早いのか、それほど混んでいない。高級そうな感じで武志には敷居が高い。
 ブリジットが料理を選ぶ。生ものは苦手らしく、焼き物中心になる。ここまで来て日本食とも思ったが、意外とアメリカ風にアレンジされている。武志にとって、食べやすく、少し懐かしく、少し新鮮に感じる料理だった。あえて言うと創作和食に近い感じの料理だ。
 食前酒に日本酒をたのみ、二人で乾杯する。その後、武志はひたすら食べまくった。
 飛行機の機内食が物足りなかったのと、観光で疲れたのと、何より、もう丸々二十四時間以上起きているから、お腹が空いていた。
 ブリジットも器用に箸を使い食べている。マイクもうまかったが、アメリカ人の上流は箸が使えるのが当たり前なのかもしれない。
 ブリジットは去年武志がアメリカへ来たことを知っていて、そのときの事を聞きたがる。去年のメンバーに何か聞いたか、噂でもあるのか、武志の事に興味がある様子だ。
 武志は適当にごまかして答えた。武志に他人とのセックスをぺらぺらしゃべる趣味は無い。
 夕食の後部屋へ戻ると、疲れと満腹感と軽い酔いのせいで、武志は服だけ脱ぐとシャワーも浴びずにベッドに潜り込んだ。
 ベッドの中で、今日はやけに日本に関係する所を回ったなと武志は思った。
 そして、明日からの事を考えている内、いつのまにか眠ってしまった。

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