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一条流の戦い:第27章

 武志は父親から奥義の話を聞いた後も、それ以前と変わらぬ日々を送っていた。毎日朝と夕方にトレーニングを行い、平日は大学へ通い、週二日は純子と体を合わせる。英語のヒアリングも毎日続けている。そして日曜日には美穂達と会う。
 最近変わった事と言えば、サイクリングを始めた事だ。麻衣がいなくなった分、四週間に一回日曜日が空いた。その日に自転車で遠出をするようになった。まだ一回しか行っていないが、往復六十キロも走ると結構な運動量になるし、思ったより気持ちが良い。武志には趣味らしい趣味は無かったが、サイクリングは単調な日々に変化を与えてくれる。
 ある日の土曜日、武志は頼子部長から呼び出しを受けた。指定されたホテルへ行くと頼子が一人で待っていた。今までに無く真剣な顔をしている。
「実は武志君に中国に行って欲しいの」
「中国ですか。また研修か何かですか」
「違うわ。中国で敵の諜報部員を倒して欲しいの」
「えええーっ」
 武志は現実離れした話に驚いた。大学生である自分に敵のスパイを倒せだなんて非現実的すぎる。
「武志君も上海が経済発展をしている事は知っているわね」
「まあ、その位は何となく知っていますが」
「上海には日本企業も多数進出してて、そこの日本人外交官や現地駐在員らが次々と中国の要員に誘惑されて情報流出が止まらないの。確かに私達も日本国内で似たような事をしているけど、あくまでも対象は公務員がほとんどで民間人に害が及ぶような事はしない。だけど中国は日本企業の現地駐在員をターゲットにして、企業情報を盗み出しているの。要するに国家ぐるみで産業スパイをしているのよ。今年に入ってから数十人が被害に遭っているの。その駐在員がどうなるか分かる?」
「どうなるんですか」
「企業もバカじゃないから秘密が漏れたら調査するわね。そして流出元を突き止めたら首にするか左遷するのよ。そうなったら、その駐在員の家庭は大抵が破滅するわね。大企業の上海駐在員でエリートまではいかないまでも、そこそこ出世のレールに乗っていた人が首になるのよ。奥さんには本当の理由は話せないし、会社には捨てられるし、将来が崩れ去ってしまう。首にならなかったとしても、とんでもない所に飛ばされて一生出世は見込めなくなる。確かに騙される駐在員も悪いんだけど、単身赴任で外国に一人で住んでいる所へうちの隊員みたいな良い女が寄ってきたら流されても仕方が無いでしょ。しかもそれが民間企業がやるならともかく国家がやるなんて放置できない状況だわ」
「事情は分かりましたが、俺に何をしろと」
「別に殺人をしろとか言う訳じゃないの。その向こうの要員と寝て、懲らしめて欲しいの。そうすれば警告になって今後の被害は減るはずだから」
 武志は頼子の話を聞いて考え込んでしまった。確かに何とかしてやりたいが、相手は中国だ。房中術や気の使い手の本場だ。自分の力がどこまで通用するのか分からない。
「実は先週、うちの男性C級隊員を一名派遣したんだけど、相手と寝た翌朝には全裸で道路に転がされていたの。命に別状は無く、どこも怪我はしてなかったけどね。ちょっと風邪を引いたくらい」
「相手はどんな人なんですか」
「やられた隊員によると二十代前半、容姿は抜群で、うちのC級よりは上だと。それでセックスを始めるとすぐに何も考えられなくなるほど気持ち良くなって何度も射精させられ、最後は眠ってしまったらしいわ。すぐにその隊員の血液や体液を調べたけど、おかしな化学物質は発見できなかった。おそらくクスリは使わずに技だけで男から搾り取っていると思われるの」
 相手も気を使っているのかもしれないと武志は思った。
「もし俺が断ったらどうなるんですか」
「今後も不幸な人が増え、そして日本政府が我慢できなくなった時、お互いに血が流れるわね。本来私達は血を流さずに解決する為に存在しているけど、私達がダメなら本職の諜報部員が出て行くしかないからね」
 頼子が武志に頭を下げてお願いする。
「武志君、この通りお願いします。この作戦は、これ以上不幸な人を出さない為にも、不要な血を流さない為にもなるし、日本の国益にもなるの。資源の無い日本が世界の中で生きていくには技術を守るしかないのよ。武志君の子供の世代が平和で安全な生活を送る為にも必要な事なの。武志君の安全は絶対に保証するから。お願いします」
 頼子の話に嘘は無さそうだ。不要な血が流れるのを防ぐためなら、じいさんも許してくれるだろう。もし相手にやられたとしても全裸で転がされるくらいなら何とも無い。今まで世話になった頼子に、ここまで頼まれて断れる武志ではない。
「分かりました。行きます。ただ一ヶ月待ってもらえませんか。今のまま行って中国相手に勝てるとは思えません。そこまで俺も自惚れていませんから。一ヶ月の間に死ぬ気で修行しますから」
「行ってくれるのね。でもそこまで待てないの。今も日本人が狙われているのよ。それに時間を空けすぎると中国側は情報を収集し終わったり、ターゲットや要員を変更したりするから。今なら中国側の要員が接近して来ている駐在員が一人判明しているの」
「じゃあ、せめて、三週間待ってください」
「分かったわ。私達もがんばって三週間は向こうの要員を抑えておくから……。三週間後ならちょうど連休ね」
 頼子がカレンダーを見ながら言う。
「訓練の相手に、また知香でも行かせましょうか」
「いえ今回の訓練は一人でやります」
 武志は先日父から聞いたばかりの奥義の事を考えていた。おそらく中国の事だ、幼少の頃から訓練を重ねて相当な技を持っているに違いない。相手も気を使ってくるとなると最低でも一番目の奥義を会得しておかないと勝てないだろう。
 こんなタイミングを見計らった様に父から奥義を教わり、次の仕事が来るとは父親と部長は通じているのではないかと勘ぐってしまう。
「そう言えば一つだけお願いがあります。中国語や中国文化に詳しい人を紹介してください。せめてチャイナドレスの脱がせ方くらいは覚えて行きたいですから」

 それからの三週間、武志は純子との訓練を休み、奥義逆流の習得に励んだ。まずはイメージトレーニングだが、しょっぱなでつまづいた。何をどうイメージすれば良いかが分からない。逆流と言うからには逆に流せば良いのだろうが、丹田に集まった気を体全体に戻すというのがイメージしにくい。それに体全体に気を分散させる事で、なぜ快感を押さえ外から気が入ってくるのを防げるかが分からない。
 先祖の人はもっと分かりやすく奥義を伝えてくれよと言いたくなる。
 そこで、発想を変えて同じ人間の体ということで血液の流れで考えてみた。
 血液は心臓から動脈を通って全身へ流れ、全身から静脈を通って心臓に戻る。そして肺で酸素が供給される。
 気の場合は自分の気が外向きの道を通り、全身から丹田に集まり肉棒等から相手の女性へ流される。相手からの気は内向きの道を通り、全身から脳へ流れる。
 両者を比べてみると似ているようで微妙に違う。
 血液の場合は全身は酸素の消費地であるが、気の場合は生産地であると同時に相手の気を受ける場所だ。血液のことを思いついたときは問題が解けそうな気がしたのに、何かが間違っていて、ぴったり当てはまらない。
 解けそうで解けない。物忘れした時に喉元まで思い出しているのに出てこない。そんな気持ち悪さだ。
 そこで武志は流れを図に描いてみた。
血液: 肺 ←→ 心臓 ←→ 全身
気を出す場合: 全身(気が発生) → 丹田 → 先端部(肉棒、舌、指から放出)
気を受ける場合: 全身 → 脳

 血液の流れを分けて考えて見たら……。武志はふと思いついた。
血液行き: 肺 → 心臓 → 全身
血液帰り: 全身 → 心臓 → 肺

 かなり似てきたがまだちょっと違う。全身の役割が違う。全身は酸素を使って、二酸化炭素を出す。気を作って、気を受ける。
 酸素、二酸化炭素、自分の気、相手の気……。
 そうだ。酸素と二酸化炭素で考えればいいんだ。武志は気が付いた。
酸素(自分の気): 肺(全身) → 心臓(丹田) → 全身(先端部)
二酸化炭素(相手の気): 全身(全身、特に肉棒) → 心臓() → 肺(脳)

 血液における心臓=丹田、肺=脳と全身、全身=肉棒と考えるとほとんど一致する。血液の流れで考えないで酸素(=自分の気)と二酸化炭素(=相手の気)で考えれば良いのだ。
 肺で酸素が取り込まれ(全身で気が作られ)、心臓から全身(丹田から肉棒)へ送られ消費される。全身で二酸化炭素(肉棒で相手の気が)が取り込まれ、肺で捨てられる(脳で快感を感じる)。
 同じ全身と言う事で血液における全身と気における全身の役割を勘違いしていた。酸素と言う観点で見れば血液での全身は、気では肉棒に当たるのだ。ここまで分かれば後は早い。
 要するに肉棒から脳までの内向きの道に自分の気を流せば良い事になる。これだと自分の気が脳までの道に満ちる事で相手の気を防ぐという事が理解しやすいし、イメージもやりやすい。
 まずは丹田から肉棒へ送った自分の気を内向きの道を通して脳まで送ることをイメージする。
 だがこれは言葉で言うのは簡単だが、実際に行うのは非常に難しかった。武志が知っている気の使い手は自分以外には父親と、一度だけ寝た清佳の二人だけだ。男性相手に訓練はできないし、頼子が清佳を訓練相手にさせてくれるとは思えない。それで武志は自分の体に女性の気が流れるという感覚が良く分からない。清佳とのことは幻だったかのように、よく覚えていない。内向きの気の道がどこにあるかも良く分からない。
 それでも武志は一人で手探りをしながら訓練していった。もし訓練風景を見た人がいれば、座ったまま寝ているようにしか見えないだろうが、本人は必死だった。

 三週間がすぎ、武志が上海へ出発する日が来た。
 ここまでで、できるだけの事はやった。
 武志は昨日純子に会い、精液を枯れるまで搾り取ってもらった。少しでも射精を遅らせるためだ。
 そして祖父が残した資料に今まで自分が得た知識を付け加えておいた。頼子は安全を保証すると言っているが、万が一の事を考えた。それと遺書と言うほどの物ではないが今回の旅行のいきさつ、万が一の時に連絡して欲しい人や、やって欲しい事を書いて自分の部屋の机の引き出しに入れておいた。
 上海へは連休を利用して三泊四日で行くので、親には友達の所へ泊まるとしか言っていない。美穂達にも何も言っていない。日曜日がちょうど彼女達の休薬期間に当たるので特にごまかす必要も無い。
 金曜日の大学の授業が終わるとその足で成田へ向かう。少しでも滞在時間を長くする為に夜の便で上海へ渡る。
 今回は隠密行動となる為、武志はパックツアーに一人で参加して一般人にまぎれて行動する。飛行機と空港までの送迎とホテルだけの最小パックを頼んでいる。サポートしてくれるエージェントとは現地で会うことになっている。
 ツアー会社のカウンターへ行くと平日夜の便だというのに他に三人の人がいた。一人だと目立ってまずいと思っていたのでちょうど良い。
 海外旅行も二回目で武志は特に戸惑う事無く手続きを済ませ機中の人となった。
 成田発20:55、上海着23:25でほぼ定刻通りに到着。入国手続きは係官の無愛想さに驚いたが何事も無く済み、偽パスポート(といっても住所氏名以外は本物だが)の武志はほっとした。ツアーの迎えの車に乗りホテルに着いたのは午前一時をすぎていた。ホテルは地方の駅前ビジネスホテルという感じだが泊まる分には何も問題ない。
 武志は部屋へ入ると早速シャワーを浴びた。髪を乾かすと成田で買ったお菓子を食べながら一息ついた。時計は二時近くを指している。いつもならとっくに寝ている時間だが、武志は任務の為に一週間前から生活を夜型に切り替えていた。
 明日のこの時間には中国側の隊員と戦っているはずだ。それを考えると気持ちが昂ぶってくるが、移動でさすがに疲れたので寝る事にする。明日に備えて睡眠を取っておく必要も有る。寝付けそうに無いが無理して横になる。明日のスケジュールを思い出しながら何度も寝返りを打つ。結局武志が寝たのは一時間以上経ってからだった。

 朝食後、武志は観光がてら中心部へ出掛ける。人民公園をぶらついた後にエージェントとの待ち合わせ場所である博物館へ向かう。
 今日はエージェントと待ち合わせしてから、夜は中国側要員と対する事になる。
 明日は予備日で、あさって帰国する事になる。時間が経つに連れて武志は自分がどんどんドキドキしてくるのを感じていた。精神を集中し落ち着こうとするが、どうしても興奮してくる。今まで武志が相手をしてきたのは敵と言うより味方に近い。S部隊もアメリカも武志を倒そうとはしていたが、あくまでも試合みたいな物だった。だが、今回は違う。本当に敵との戦いだ。
 武志がチケット売り場の前で待っていると、肩を叩かれ話しかけられた。
「どうぞ」
 日本語だ。
 武志が振り返ると一人の女性がチケットを差し出している。ちょっと見は現地の人と思わせる服装をしていて目立たないタイプの人だ。年齢は二十五歳位だろう。
「ありがとう。でもいいんですか」
「上海の夜は熱いから」
 合言葉が合っている。エージェントの人だ。
「武志です。よろしくお願いします」
「優子よ。よろしくね。まずはお昼ご飯でも食べに行きましょう」
 武志は地元民が入るような庶民的な中華料理の店へ連れて行かれる。武志はメニューが読めないので優子が適当に頼む。
「ここは値段の割りに美味しいのよ」
 確かに美味しい。武志は若さを見せてばくばくと平らげていく。
 食事が終わると電車とバスを乗り継いで優子が用意した部屋へ向かう。
「ここはセーフハウスで盗聴器のチェックも済んでるから安心して話をしても大丈夫よ」
「さっそくですけど、今日の詳しい話を教えてもらえますか」
「今夜九時、ホテルで駐在員と中国の要員が会う事になってるの。彼女の名前は芳玲《ファンリン》。漢字で書くと、芳は芳しい。草冠に方角の方ね。玲は王編に命令の令。武志君は上司の子供と言う事で芳玲に紹介されます。向こうはお金に困ってると言う触れ込みだから、武志君が一晩芳玲を買うという話になって、後は武志君と相手の二人きりになります。彼女は簡単な日本語はできるので、意思疎通にはそれほど困らないと思います」
「そんなので疑われませんか」
「武志君は上司の息子と言う立場を利用して、金に物を言わせて女を買うという役です。中国では売買春は犯罪だし、病気が怖いので安全な女を要求する。だけど駐在員にそんな心当たりは無いし、上司には逆らえなくて仕方なく自分の女を紹介するという筋書きです」
「ちょっと怪しい話ですよ」
「日本人からすると普通は有り得ない話だけど、中国人にすれば有り得る話なのよ。その場さえごまかせればいいから大丈夫よ」
「どうしても断られたらどうすればいいですか」
「その時は女を囲っている事を会社や奥さんにばらすって言えばいいのよ。駐在員が会社を首になったら困るのは中国側なんだから。間違いなく話に乗るわ」
 武志としたら、今一つ不安だが優子を信じるしかない。
「セックスが終わったらどうすればいいですか」
「相手を倒す事ができたら何もしなくていいわ。相手が動けるようになる前に部屋を出て、タクシーで自分のホテルへ戻って。後の始末は私達がやるから」
「もし俺がやられてしまったら」
「その時はすぐに救出に向かうわ」
 武志はしばらく考えてから優子に聞いた。
「駐在員の人の事を教えてもらえますか」
「名前は中村さん。普通の会社員で技術責任者。日本に奥さんと娘が居るわ」
「中村さんや会社は今回の作戦の事を知っているんですか」
「もちろん知っているわ。だから私達に依頼が回ってきたの。だけど会社は知らない振りをすることになってるの。そうしないと中国進出が失敗してしまうから」
「中村さんはどうなるんですか」
「表向きは持病が悪化して日本に帰る事になります。だけど裏では技術流出しかけたという事で左遷されます。これは中国側への配慮の為ね。裏の裏の本当の所は、しばらくして前以上の役職へ出世します。流出を防いで日本政府に協力したんだから当然ね」
「中村さんは芳玲と寝たんですか」
 武志は気になっていた点を聞いてみる。
「寝たわ。寝ないと中国側が乗ってこないというのと、協力の謝礼として私達が寝る事を許可したの。会社も黙認してるわ。それにS部隊の事を黙っていて貰う為には、かれにも秘密を共有してもらわないと」
「中村さんはどうして芳玲の誘いに乗らなかったんでしょうか」
「会社への忠誠心か、奥さんへの愛情か、芳玲と娘の年が近いからかもしれない。私にも分からないわ」
「最後に聞きますけど芳玲はどんな女性なんですか」
「一言で言うと超美少女よ。気を付けてね」
 優子は説明が終わると武志へ資料を渡した。会社、中村氏、その上司について等の最低限の事が書いてあった。芳玲についても、体の予想サイズから、自称の個人情報が書いてあった。彼女の写真も付いていたが、かなりの遠距離から写したのか、かなりぼやけて、顔がはっきりしない。なんとなく綺麗そうな感じはする。
 武志は資料を覚え、優子が持ってきた夕食を食べ、夜に備えた。

 そして作戦開始の時間が来た。
 武志は一人でタクシーに乗り、作戦の場所となるホテルへ向かう。
 ロビーには中村氏が既に来て武志を待っていた。武志は中村氏の写真を見ていたのですぐに見つけることができた。ここから先はいつどこで見られているか、盗聴されているのか分からないので、不要な事はしゃべらない。
 武志は中村氏と二人で部屋に入る。部屋に入ると、盗聴に備えて芝居をする。
「その芳玲とかいうのは大丈夫なんでしょうね」
「大丈夫です。金に困ってる貧しい家の娘ですから」
「いい女ですか」
「私が言うのもなんですが、びっくりするほどきれいですよ。見たら驚くと思います」
 そうして二人で小芝居をしているとドアがノックされた。武志はソファに座り、芳玲が入ってくるのを待つ。
 芳玲は部屋の中に別の人間が居るのを見て、ドアの所で中村氏と口論を始める。中国語と日本語交じりの会話だが、何となく言っている事は分かる。中村氏は武志と寝てくれと言い、芳玲は嫌だと言っているのだろう。しばらく話していたが中村氏の説得が効いたのか、芳玲がしぶしぶ了解したようだ。
 芳玲が中村氏に連れられて武志の前に来る。
「おぉっ……」
 武志は想像以上の美しさに驚いた。いや、驚くことを忘れるほど驚いて、彼女に見惚れた。
 確かに超美少女だ。優子の説明は的を射ている。
 年齢は二十代前半らしいが、美女というよりも美少女と言う感じだ。外見の儚さがや脆さが、彼女を年齢より若く見せている。
 身長は160cmちょっと位で、体にフィットした派手で安っぽいワンピースを来ている。チャイナドレスではないのが少し残念だ。
 服の上から体のラインがはっきり分かるが猛烈にスリムなスタイルをしている。これ以上痩せると痩せすぎで魅力が減ってしまうぎりぎりの線だ。
 折れそうなほど細いのに、胸は大きい。ワンピースの布地を高く突き上げている。ウエストが細いので実際以上に胸が大きく見える。
 そして、顔は超美少女だ。日本でもなかなか居ないレベルである。全体的に小さ目のパーツでできていて、目だけがくっきりとしている。濃いグレーの瞳と真っ白な白目の部分が対照的である。そして当たり前のように二重のまぶたも目を印象付けるのを助けている。
 唇は小さいのにぷっくらと盛り上がっている。少し厚めで、とても柔らかくてみずみずしい感じがする。
 しかも顔が小さい、手脚の細長さとあいまって、まさに八頭身美人と言える。
 お金に困った貧しい家の薄幸の少女を演じる為か、垢抜けない髪型に控えめな化粧をしている。それが見事に純朴さと清楚さを表している。髪形を変え、眉を整え、もう少し化粧をすれば、すぐにでも日本で芸能界にスカウトされるに違いない。
 武志が今まで会った女性でいうと麗華が一番タイプが近い。麗華をもっと美しく儚げに純朴にしたタイプだ。S部隊で言うとB級以上の美しさになるだろう。
 そんな芳玲を見ていると猛烈に保護欲と独占欲を掻き立てられる。中村氏がこの美少女の誘惑に負けなかったとは信じにくい。中村氏を尊敬してしまう。
 普通の男なら間違いなく全てを投げ出し、手に入れようとするだろう。もし芳玲が中国の要員じゃなかったら、武志は頼子にお願いして、全力で日本に連れて帰ろうとする。
 こんな美少女に迫られたら、そりゃ情報は流出するなと武志は思った。
 中村氏が芳玲の耳元で何かささやき、武志にお辞儀をして部屋を出て行った。
 部屋は武志と芳玲の二人きりになる。武志は心の中で気合を入れなおした。ここからは金に物を言わせる悪い男にならないといけない。そして芳玲を倒さねばならない。武志は三万円相当の中国元を芳玲に渡す。
 芳玲がお金をカバンへしまう。
 武志は役になりきり、立ち上がると芳玲を抱きしめ、いきなり唇を奪う。華奢な体は力を入れると壊れそうで怖い。ウエストは両手で握りつぶせそうな感じさえする。武志が今まで体を合わせた事が有る女性の中で一番スリムだ。
 尻に手を回し揉むと小さいが張りがあり吊り上っている。揉み込むと弾力の有る良い尻であることが分かる。
 それに肌の手触りが良い。しっとりしているのに、すべすべしている。撫でているだけで気持ち良く、うれしくなってくる。今までのどの女性とも違う感触がする。
 唇は柔らかく甘い。そして体から香水と体臭と少し汗の匂いの混ざった甘ったるい香りが濃く立ち昇ってくる。その香りを嗅ぐだけで、頭がクラクラして、肉棒がムクムクと大きくなってくる。
 武志が飽きる事無く唇を吸っていると、芳玲が遠慮がちに手を武志に回し、体を密着させ、舌を入れてくる。
(甘い)
 舌にはたっぷりの唾液がまぶされていて、武志が唾液を味わうと甘い。味が付いている。普通唾液には味など無く、甘く感じるのは錯覚だが、芳玲の唾液には本当に甘い味が付いている。事前に甘い物でも食べたのか、それとも体質か訓練か分からないが確かに味がする。
 武志は夢中になって舌を吸った。芳玲もどんどん唾液を送り込んでくる。武志はキスだけで気持ち良くなり頭がぼーっとしてくる。だが、頭の奥で何かが警告を発している。キスだけで思考力を奪われるのはおかしい。この感触はS級の清佳と寝た時と似ている。やはり中国側の要員は気を使うのかもしれない。
 武志はキスに満足した振りをして口をほどき芳玲に言った。
「脱がせて」
 芳玲はぎこちない手つきでシャツのボタンをはずしていく。シャツが終わると、靴下、ズボン、トランクスと脱がしていき、武志を全裸にする。
 武志は芳玲の肩を押し正座の態勢にさせると、肉棒を顔の前に突き出した。
 芳玲は何も言われなくても、棹を両手で捧げ持ち先端に唇を付ける。ぎこちない振りをしながら肉棒をペロペロと舐めていく。
(な、なんだ、これは)
 武志は今まで経験した事の無いフェラチオの感触にとまどった。舌が触れている所は溶ける様な気持ち良さが有り、それに加えて皮膚の内側の性感帯を直接舐められている様なピリピリした強い快感も有る。これは普通の技ではない。やはり、気か何かを使っている。清佳と経験が無ければ分からなかった。頼子はこんな先の事まで考えて清佳と寝かせたのかと、ふと武志は思った。
 このままでは一方的にやられてしまう。武志は急かせる様に芳玲に咥えさせる。
「おっ、おおぉー……」
 咥え方はぎこちないが、武志の快感は一気に跳ね上がる。
 芳玲の口の中は暖かく、唾液に溢れていた。それに、舌が亀頭を舐め回るだけで普通のフェラとは段違いに気持ち良い。特に先端に舌が触れた時には尿道の中を快感が突き抜け脳にまで達する。これは間違い無く気を使っている。
 舌が自由自在に亀頭を這い回り、尿道の先を刺激してくる。そして唇が絶妙な圧力で竿を締め付け、エラを引っ掛けるように刺激する。
 フェラのテクニックも相当な物を持っている。その上、気を流されている。武志は急速に射精感が増してきて危険を感じる。このままでは一方的にやられて終わってしまう。
「ぅおおおー……」
 芳玲の頭を持つとイラマチオをする。肉棒の根元まで口の中に押し込む。先端が喉の奥に当たるのが分かる。芳玲はむせることも無く飲み込んでいる。もう清純派の演技は止めたのか、忘れたのか、根元まで飲み込んでも忘れずに舌を使ってくる。
 これ以上はまずい。武志は肉棒を引き抜いた。
 芳玲から離れ、すこし興奮を落ち着かせる。ベッドの端に座ると、彼女に脱ぐように命じる。
 芳玲は恥ずかしがり横を向きながら服を脱いでいく。武志はそれをじっと見ている。ワンピースを脱ぐと彼女のスリムな体があらわになる。
 白でちょっと安っぽい一昔前の日本みたいな下着が、あばらの少し浮き出ている痩せた体に似合っている。
 太ももも細い。足が細い子でも太ももは普通の子はいるが、彼女は太ももも細い。足を揃えて立っても、太ももの間に隙間ができている。
 それに手脚がまた細くて長い為に余計に痩せて見える。これで胸が無ければ単なる痩せすぎの子だが、胸が大きい為にそこに目が行きバランスの悪さを感じさせない。
 それにしても脚が長い。武志に中国人の知り合いはいないが、こんなに脚が長いものなのか。腰の位置が武志とそれほど変わらない。クォーターである愛や優と同じ位の長さがある。
 芳玲がブラを外す。カップを手で押さえたまま片手で器用に外すと、胸を手で隠したまま抜き取る。
 武志は立ち上がり近づくと、彼女の手を後ろへ回して組ませる。胸が突き出された。
 平らな胸元から急に乳房が盛り上がっている。形も半球型やお椀型ではなく前に突き出る形の砲弾型に近い。欧米人型の胸だ。
 この体にこの胸とは、中国の部隊はいったいどこで女の子を見つけてくるのか。
 まずは乳首を吸う。甘い。胸からも気を出しているのか。左右の乳首を交互に吸いながら、乳房を強く揉む。張りがあり表面は柔らかく、中は硬い弾力がある。そして乳首を吸っているだけで気持ち良くなってきて頭がぼーっとしてくる。これはキスした時と同じ感覚だ。やはり胸からも気を出している。乳首を吸うのもまずい。
 彼女の後ろにまわり、後ろから両手で乳房を揉み込む。滑らかな手触り、適度な弾力でいつまでも揉み続けたくなるような素晴らしい胸だ。武志は胸の奥の芯をほぐすように執拗に揉み込む。
「あぁ……」
 そうしながら、芳玲の首筋に吸い付き、肩にかけて舌を這わせて唾液の跡を付けて行く。美しい物を汚す感覚に我を忘れそうになる。
 そして肉棒を彼女のお尻に押し付け、プリプリの弾力を味わう。
 彼女の体はどこも素晴らしい。
 両手が揉み疲れる頃、彼女の胸はピンク色に上気していた。
 武志は芳玲の前に移ると、ゆっくりとショーツを下ろしていった。陰毛は細く薄い。クリトリスから恥丘にかけて噴水形でまばらに生えている。脚を少し開いているので、秘肉も見える。色はピンクから茶色へと変わる途中で、まだ初々しい。ビラビラのはみ出しも控えめで、ぴったり閉じていて、清楚な感じさえする。
 芳玲は混血なのではないかと武志は思った。顔の小ささ、胸の形、秘肉の色などは日本人より欧米人に近い。中国でも西北部のシルクロードの辺りでは、彫りの深い欧米人に似た顔の人が多いと聞く。芳玲も純粋な漢民族では無いのかもしれない。
 ショーツを脚から抜き取ると、武志は芳玲を抱き上げてベッドへ運ぶ。子供のように軽い。
 ベッドの真ん中に寝かせると脚を開かせ、その間に潜り込む。ビラビラを指で広げ秘肉をじっくり観察する。
 大きさは小さめで中は濃いピンク色をしている。すでに愛液でぬるぬるになっていて、いい匂いがする。芳玲は体臭や愛液さえも甘い花の匂いがする。これは香水の類ではない。その証拠に新しく湧き出てくる愛液も甘い匂いがする。中国では匂いまでコントロールできるのか。武志はそら恐ろしく感じる。
 愛液の味は薄く、粘りも薄くサラサラしているが量は多い。武志が舌と指で責めると次から次へと湧き出し、後ろの蕾へと流れていく。
 ここで気を使って相手に警戒心を抱かせるのはまだ早いと判断して、普通のテクで責める。片手でクリトリスの皮を剥き舌で舐める。クリトリスは小さく日本人の半分位しかない。色は濃いピンクというか瑪瑙色をしている。既に興奮しているのか充血している。
 クリの周りから丁寧に舐めていく。小さくて舐めにくいが唾液をたっぷりまぶし舌先でくすぐるように優しく舐める。
「あ、あ、あっ……」
 少しずつ芳玲から声が漏れ始める。それに合わせて武志は少しずつ舌先に力を入れ、たまにちゅっと吸い付く。そして中指を秘肉の中に入れてみる。
 中は熱くトロトロに溶けている。指一本でも狭い位でとても締りが良い。指を出し入れしながら、指の腹で中の具合を探る。上側には細かいざらざらが在り気持ち良さそうだ。中指を一番奥まで入れても子宮口に届かないので深さは普通かそれ以上の様だ。
 人差し指も追加して二本で出し入れすると、急に締りが良くなり指の根元をしっかりと締め付けてくる。感じてくると締りが良くなる体だ。
 クリトリスを吸いながら、指を曲げGスポットの辺りをこすりながら、指の出し入れを早くしていく。
「あん、あん、あん……」
 指の動きに合わせて芳玲の声も大きくなってくる。中国ではGスポットをあまり責めないのだろうか。芳玲の両手が武志の頭を掴む。押しのけようとしているのか、快感を耐えているのか分からないが、多少は効いている。武志は指を緩めずにクリトリスを口に含みチューチュー吸ったり、舌先で高速にはじいたりしてやる。
「ああー、ああー、ああー……」
 芳玲の声は控えめだが、艶を帯びたものになって来る。
 武志は指がだるくなるのもかまわず抽挿を続けるが、芳玲の快感は一定のラインを超えず、指だけではいきそうに無い。オナニーの手伝いをしている気になって来る。芳玲は快感をある程度コントロールでき自分の指を余裕で楽しんでいるのかもしれない。武志は肉棒で決着を付けるしかないと思った。
 ここまで気は一切使っていない。武志が芳玲の気を知覚した様に、気を使うと武志が普通の男ではない事がばれてしまうだろう。そうなると、武志は気を使い始めたら一気に勝負を決めないといけない。相手の技がまだ分からない以上、時間を掛けるほど反撃される可能性が高くなる。
 武志は指を抜くと芳玲の口の中に入れる。芳玲は嫌がりもせずに舌をからめて自分の汁を舐め取っていく。
 指がきれいになった所で武志は横になり。芳玲に上になるように言う。
 ためしに指を舐めてみるとかすかに甘い味がする。花の匂いもかすかにする。やはり芳玲の体液は特別だ。
 芳玲が肉棒を片手で掴み位置を合わせるとゆっくり腰を降ろしてくる。
 武志は肉棒が温かいものに包まれていく感触を噛み締める。
 指を入れたときには少し狭いかなと感じた秘肉が武志の肉棒にジャストフィットして優しく包んでくる。
 芳玲の秘肉は入って来る物に合わせて中を変化させる技を持っているようだ。指一本の時と中の感じが明らかに違う。肉棒全体を柔らかい物でやさしく締め上げてくる。これからお互いの昂ぶりに合わせて締める力を強くしていくのだろう。
「んふぅー……」
 芳玲は根元まで肉棒を腹の中に飲み込むと一旦止まり肉棒の具合を探っている。硬さ、太さ、長さを自分の秘肉で測っているのだ。
 芳玲がゆっくり動き始める。それとともに先ほどのフェラで感じた感覚が何倍にもなって武志を襲った。表面が溶けるようでいて、かつ、ピリピリした快感が尿道から背中、脳へと駆け抜ける。腰の周りは熱を持ち溶けた様になり、頭の中を快感が満たし始める。
(ああ、俺が今まで相手をしてきた女性はこんな感覚を味わっていたんだ)
 武志は気による快感を身を持って知らされていた。頭の中がだんだん霞が掛かった様に白くなっていく。何も考えられなくなりそうだ。
 このまま流されてはいけないと頭の片隅で警報が鳴っている。まだ騎乗位で胸が揺れる姿も見てないし、芳玲のテクもほとんど味わっていない。だが、そんな事を言っていられない。もうこちらも気を使うしかない。
 武志は手を伸ばして芳玲の体を抱き寄せて自分に倒す。女性上位の体勢だ。
 片手で頭を抑えて固定しキスをする。もう片手で背中を押さえる。
 芳玲の体を固定すると、肉棒を最奥まで突っ込み先端を子宮口に合わせる。そして大きな気の塊を叩き込んだ。
「ああああー……」
 芳玲が大きな声をあげた。
 一発目で子宮を焼き尽くし、首の根元まで気の道が通る。芳玲は突然の快感に驚き、塞がれている口からうめき声をあげる。体を反らそうとするが武志ががっちり押さえ込んでいて動けない。気の使い手の場合は気を受けやすいのかもしれない。それとも子宮に溜った芳玲の気と打ち込まれた武志の気が反応しているのだろうか。今までの相手より気の流れが良い。
「あ、あ、あ、ああああーっ」
 そして二発目が芳玲を襲う。気は一気に脳まで届き頭の中を一瞬で白く染め上げ快感を爆発させる。先ほどよりも大きな力でもがくが武志は芳玲を離さない。
「ぅおおおおおーん」
 三発目が打ち込まれ芳玲は今までで一番大きな生臭い声をあげる。子宮から背中、脳まで焼き尽くされ頭の中で何かが爆発する。体をぶるるると震わせているのは軽く達した証拠だ。
 合計三発。普通なら二発で十分気の道が通るのだが、形成を逆転する為にいつもより一発多めに気を送る。
 武志はチャンスと見て循環の技を開始する。肉棒の先端で子宮口をゴリゴリとこすり、舌を吸い上げる。そして気を流し始めた。

(な、なに?)
 芳玲は突然何が起こったのか分からなかった。武志に抱き寄せられたかと思うと急に快感が体を突き抜けた。子宮が燃えるように熱くなり、下半身が溶けてしまった様になる。ピリピリ痺れるような快感がある事で下半身がまだ存在していると分かる。背中も熱を持ち、寒気に似た体が震える快感が走る。頭の中は白いガスで満たされ思考力が急激に落ちていく。
 まさか、この相手は気を使っている。それも大量の気を送り込んでいるのか。それ以外にこんな急に快感が湧き上がるとは考えられない。自分が今まで相手にしてきた男が言っていた感覚が自分を襲っている。子宮がより強い快感を求めて激しく疼く。秘肉の中では濃い本気汁がじわじわと滲み出している。
 この男は普通の男ではない。芳玲は気を持ち直すと『永恒快楽』の技を出す。秘肉から気を滲み出させ肉棒に吸収させる。そしてその気を相手の口から吸取り再び肉棒へ送る。これを相手が倒れるまで続けるのだ。
 だが芳玲は、武志が循環と呼ぶ全く同じ技を持っている事を知らなかった。大きな気はすぎたが、小さな気がトロトロと子宮に流されて来ていた。
 武志と芳玲は相手がまだ気を流している事に同時に気が付いた。
 武志はあれほどの気の塊を受けておきながら、まだ芳玲が反撃してくる事に驚いた。普通の人ならもう何も考えられなくなっているはずだ。
 芳玲はあれほどの気を放っておきながら武志にまだ送る気が残っている事に驚いた。自分にはあれほど大量の気を送る事はできない。
 二人はお互いに驚きながら気を流し合っている。
 武志は必死に射精をこらえていた。少しでも気を抜くとあっという間に出してしまいそうだ。そこで武志は疑問を感じていた。なぜ芳玲は気を一気に送って勝負を付けないのか、今大量に気を流されたら武志は一たまりも無く吹き上げてしまうだろう。
 武志が一気に勝負を付けない理由は、もし全ての気を一気に送っても勝負が付かない場合、確実に負けてしまうからだった。相手の手の内や限界が分からない状態で全ての力を出し切るわけにはいかない。純子や知香の様に絶頂の限界が高い場合や、指で責めていた時に感じた様に芳玲が快感をコントロールできるとしたら気だけではイカせられない。
 もし武志が芳玲の立場なら、最初に気を大目に使い、まずは射精させる。そして体力的、精神的に弱った所をさらに責める。二回目は気も通りやすくなり反撃も弱くなっているので一回目より少ない気でイカせることができるだろう。これを繰り返すと勝つことができる。
 芳玲がこの手を取らないと言う事は、武志の様に用心しているか、大量の気を送る事ができないかだ。
 芳玲は持っている気の量が少ないのだ。気の量が筋肉に比例するとしたら、スリムな芳玲は気の量が少ないのだ。大量に送るだけの気が無いに違いない。となると相手の得意な短距離で戦うよりも苦手な長距離で戦った方が有利になる。このまま何とか現状維持をして相手の力が尽きるのを待ってやる。武志は考えていた。
 武志がそう考えていた時、芳玲も必死で快感をコントロールしていた。
 ちょっとでもミスをすればあっと言う間に絶頂に達してしまいそうだ。ぎりぎりの綱渡りをしながら意識を秘肉に集中していた。彼の体を見ると底無しの体力を持っていそうだ。このまま長時間の我慢比べになると体力の無い自分が先に根負けするだろう。そうなると後は相手の好きな様になぶられてしまう。それだけは避けなければいけない。
 もう、後は気を節約しながら肉体のテクニックで倒すしかない。キス、フェラチオから始まって、これだけの気を送っても射精しないとは相手はよほどの鍛錬を積んでいると思われる。普通のやり方では倒せないだろう。
 もう骨を切らせて肉を絶つしかない。なんとか同時絶頂に持ち込む。自分よりは男の相手の方が体力を消耗するだろう。一応自分は体力が無いように見えても耐久訓練は受けている。ノーマル・セックスならば相当の回数をこなす事ができる。いつか相手が先にギブアップするだろう。
 芳玲は秘肉を締めて武志を追い込みに掛かった。
 武志は肉棒が急に締め付けられるのを感じた。芳玲が勝負に来たのか。何とか我慢しなければいけない。締まりはどんどん強くなっていく、S部隊で一番締りが良い知香と同じ位までに締め上げてくる。しかも秘肉が締まりながらうねって来る。根元から先端に搾り取るように肉が動いている。中国側は中の肉まで自由に動かせるのかと武志は驚かされた。
 さらに芳玲は肉棒を中心に腰を回し始めた。それにより肉棒に捻りの刺激が加わる。
 さらに芳玲は自分の子宮口で亀頭の先端をグリグリこね回す。
 これには武志も溜らず声を上げた。
「おおおおーっ」
「ん、ん、ん、んっ」
 芳玲も自分の体の動きに合わせて可愛いあえぎ声を出す。
 武志は射精感が限界近くまで来ていた。気を流されるだけでも危なかったのに、テクニックを追加されるとあっと言う間に追い込まれていく。
 芳玲がキスを外すと武志の耳元に口を寄せた。
「気持ち良いです。気持ち良いです。気持ち良いですかぁ……」
 日本語が話せるじゃないかと武志はちょっと拍子抜けした。だが、体の方はそれ所じゃない。可愛い声で少したどたどしい日本語を耳元で話されると、ゾクーっとした快感が走る。
「あー、いいです。凄いー。もういきそうです。一緒にイッて。いっぱい出して。中にいっぱい出して。あなたをください」
 芳玲が耳元でしゃべり続ける。それに合わせて秘肉もリズミカルにさらに締めてくる。
 超美少女に耳元でそんな事を言われて、イカないほうがおかしい。もうダメだ、最後の技を出すしかない。武志は奥義を出す事を決心した。
 この三週間必死で練習した奥義逆流を出す時が来た。丹田に意識を集中し一瞬で気を整え逆流させる。
 吐き気が武志を襲う。胸焼けに似た気持ち悪さが背中をゆっくりと昇っていく。
 武志は我慢しながら腰を動かし続ける。焼ける感じが背中を昇りきり、首筋を上がっていく、そしてついに脳にまで達する。
 ずっきーんと激しい頭痛がする。焼ける感じと激しい頭痛がおさまると、今度はずきずきと鈍い頭痛と倦怠感が襲ってくる。逆流は完成した。射精感が少しずつおさまって来る。後は芳玲をイカせるだけだ。武志は大きく腰を振り始める。
 芳玲はすぐに異変に気が付いた。
 急に自分の気が流れなくなったと思ったら、武志からの気も流れてこなくなった。武志の顔を見ると眉間に皺を寄せ目を閉じている。何か技を使ってお互いの気を無効にしたのだ。後は体力勝負に持ち込むつもりだと分かった。
 芳玲は負けられないと、武志の腰の動きに合わせて自分も腰を振る。そして胸を擦り付ける。武志の耳から首筋にかけて唇と舌を這わせる。時に吸い付き、キスマークを付けながら耳元でささやく。
「出してー、出してー、いっぱい出してー、精液いっぱい出してー、ああー……」
 武志はもうテクニックも何も無くただ無心に腰を振る。意識は頭痛を我慢するのと気を逆流させるのにいっぱいで射精感を押さえる所まで回らない。一旦落ち着いた射精感がじりじりとこみ上げてくる。
 芳玲は秘肉を自在に締め、動かし、搾り取ろうとする。しかし、武志の肉棒は遠慮なく肉壁をこすり上げ、最奥を激しく突いてくる。こんなに激しい動きは初めてだった。複数の男性を相手に回数をこなした事もあるが、一人当たりの時間は短いものだった。たいていの男はあっという間に出してしまうので、これほど長い時間こすられ続けるのは、久しぶりのことだ。それに人が入れ替わる時には一瞬だけでも休息があるが、休み無しに刺激を受け続けている。
 持てる全てのテクニックを使って肉棒を絞り上げるがまだ射精しない。ものすごいタフさだ。少しずつ性感を高められてしまう。
「ぅおおおおー」
「あああああー」
 武志と芳玲の二人が叫ぶ。
 芳玲が背を丸め武志の片方の乳首に吸い付き、もう片方の乳首を爪の先で引っかく。武志も負けじと両方の乳首を摘み思い切り引っ張る。
「いぎぃー」
 芳玲が乳首を咥えながら悲鳴を上げる。
 お返しだと武志の乳首を強めに噛んでやる。
 お互いの乳首を責め合いながらも腰の動きは止まらない。
 武志の亀頭は膨らみ射精が近い事を知らせる。
 芳玲の秘肉はヒクヒクと痙攣を始め絶頂が近い事を知らせる。
 二人はお互いの最後が近い事がお互いに分かった。
「うぉおおおおぉーー……」
 武志は頭痛をこらえながら最後の力を振り絞って腰の動きを最大スピードに上げる。
「XXX、XXX、XXXー……」
 芳玲は中国語で何かを叫びながら秘肉を力一杯締め上げる。
 そして最後の時が訪れた。
「出るぅっ」
 武志はとうとう我慢しきれずに射精の引き金を引いた。
 どびゅるるるるー、ぶびゅるるるー、びゅるるー、びゅるるー……。
 武志の溜っていた精液が凄い勢いで、芳玲の子宮を叩き、秘肉の中を満たしていく。
「うっ、あぅぅぅーー……」
 芳玲は一番奥を熱いものが激しい勢いで叩く感覚に絶頂に達する。
 体を硬直させブルブルと震わせながらも、ひくつく秘肉で肉棒を絞り上げる。
 びゅる……、びゅる……、びゅる……。
 武志は残り汁まで出しつくす。
 芳玲が力尽き、武志に体重を預けて来た。荒い息をしている。
 武志も気の逆流を止め。荒い息をする。
 二人はしばらくの間そのままの格好で大きく息をしていた。二人とも体力を使い果たし動くのもおっくうになっていた。

 体を鍛えている武志は復活するのが早かったが、華奢な芳玲は時間が掛かる。
 今なら芳玲を堕ちるまで責められると武志は思ったが、なぜか、続きをする気にはなれなかった。
 もう十分戦ったという気持ちで、これ以上は蛇足だと感じた。それに、あまり時間を掛けすぎて、中国側の応援が来たらという恐れもあった。
 芳玲とは勝負抜きでもう一度会えれば、人生最高のセックスができそうな気がするが、おそらく、もう二度と会えないのが残念だった。
 武志は芳玲を抱え浴室に運ぶ。なんとか一人で立たせお湯を掛け丁寧に洗ってやる。武志も自分の体を洗う。
 きれいになった所で、浴室を出る。二人は何も言わずに服を着る。武志は芳玲の化粧が終わるのを待つ。
 部屋を出る前に芳玲は武志に聞いた。
「あなたの名前は」
「武志です」
「また会いましょう。サイツェン」
 それだけ言うと、芳玲は一人で部屋を出て行った。もうお互いに一般人ではない事が分かっている。芳玲も武志が諜報組織の人間だと薄々分かっているだろう。そんな二人に会話は不要だった。どうせ聞いても本当の事を話すはずがないからだ。そして二度と会うことも無い。
 武志が少しだけ時間をずらして部屋を出ると、ホテル前に車が一台止まり中から誰かが手招きしている。近づいてみると優子だった。想定外の事に車で迎えに来たのだ。
「乗って」
 武志が乗ると車を発進させながら優子が聞いた。
「どうなったの」
「引き分けでした。すみません。倒せませんでした」
「そっか……。まあいいわ、私の任務はあなたを無事日本へ送り返せば、おしまい。尾行が無いのを確認したらホテルの近くまで送るわ」

 翌日の武志は一日中寝込んでいた。逆流の技の後遺症で頭が痛く、体がだるくて動きたくなかった。
 食事は優子に買ってきてもらった物で済ませ、頭痛薬を飲みずっと横になっていた。
 横になると昨夜の芳玲の事を思い出してしまう。凄い相手だった。やはり房中術の本場は違う。気による快楽は凄まじい物がある。鍛錬を積んでいる武志でさえあっと言う間に射精直前まで追い込まれてしまった。
 まだ若いのに知香と同程度かそれ以上のテクニックを持っている。彼女が今後も成長すると恐ろしいものになる。今の痩せた体に、脂が必要な所にのれば、なまめかしさが加わりとんでもない美女になるだろう。
 普通に考えれば中国側が一介の技術者相手にトップの隊員を出してくるはずが無い。と言う事は芳玲以上の隊員が中国には居る事になる。芳玲でさえ奥義を使ってようやく引き分けに持ち込めたのだ、彼女以上の女性には勝てる気がしない。今以上の鍛錬を積むとともに残った奥義もマスターしないといけない。そうしないと次に中国と戦う場合には負けてしまうだろう。
 それから武志は昨夜の戦いを分析してみる。
 まず、最初からお互いの正体を知った上で芳玲と戦ったらどうなっていただろう。これはお互いの技やレベルが分からない以上、似た様な戦いになる。そして武志が奥義を出して引き分けになったであろう。
 奥義逆流を使わなかったらどうなっていただろう。これはおそらく負けていただろう。実際芳玲の技には我慢ができずに射精寸前まで行った。奥義を使わなかったら射精してしまい。後はなし崩しに一方的に絞られた気がする。
 しかし、もう一度戦った場合は多分勝てるだろう。肉体的な技やレベルでは負けているが、気の量と体力では圧倒的に勝っている。そして芳玲の絶頂限界の高さも分かった。という事は、始まると同時に相手が絶頂に達するまで大量の気を送り続ければいいのである。そして相手がふらふらになった所で止めを刺して失神させれば良いのである。
 こう考えると気の使い手と戦う場合に必要なのは、相手の気の量を読み取る力である。これさえ有れば、相手の気の量が少ない場合は気の量で勝負をし、多い場合は奥義逆流を使ってお互いの気を無効にして体力勝負へ持ち込めば良い事になる。
 しかし、気の量を読み取る力を手に入れようにも修行ができない。古文書には修行の方法は書いてあるが、気を持った女性が居る事が前提になっている。だが、その女性の探し方、育て方などは書いていない。武志の周りには気を持った女性がいないから修行のやりようが無い。
 清佳、芳玲と二人の女性を考えてみると外見的な特長は無いと思う。敢えて特徴を探すと肌へ触れたときの感触が他の人と違う気がする。柔らかい肌や手触りの良い肌に触った時に感じる気持ち良い感触とは違う。二人の肌には自分の手が弱い性感帯になったかの様な気持ち良さが有った。おそらく気の持ち主は普段から体全体から微弱な気を放出しているのかもしれない。
 良く考えてみると武志に思い当たる節があった。一日で発生する気の量、体に溜められる気の量は日次ではそれほど変化が無い。では気が満杯の状態では気の発生はどうなるのか。今までは特に理由も無く、満杯なら気は作られないだろう。足りなくなったら作られるのだろうと漠然と考えていた。だが、発生の量が一定もしくはゼロにはならないとしたら。余った気が自然と肌から放出されると考えても不思議ではない。
 もっと考えると気は絶えず肌から少しずつ漏れているのかもしれない。おそらく気は一種のエネルギーだと思われる。体温が少しずつ体の外へ出て行くように、気が漏れていてもおかしくない。物質ではないのだから完全に閉じ込めておく事ができないのだろう。
 この件は日本に帰ってからじっくり考えてみる必要があると武志は思った。

 出国は何事も無く、無事日本へ帰国する事ができた。万が一中国の公安か何かが空港で張っていたらどうしよかと思って内心ではびびっていたが何も無かった。公安の力なら顔の分かっている外国人旅行者の一人を探すのは簡単だろうから、捕まえる気が無いのだろう。直接的な被害が無い以上面倒なので放置するという所だろう。
 成田にはいつもの車が迎えに来ていた。尾行がいるかを確認しないといけないと、車はしばらくでたらめに走っている。尾行の有無を確認してから、車は頼子部長のところへ向かった。
「大体の報告は聞いています。詳しい報告書は後で出してもらうとして、それで、どうだったの」
「中国四千年の技は凄いものがありました。引き分けにするのが精一杯でした」
「うちの隊員と比べてどう違うの」
「まず外見やスタイルはA級かB級クラスで、テクニックやあそこの具合はA級以上です。それに彼女は気か何かを使ってきます」
「あら、武志君と同じなの」
 武志は驚いて一瞬言葉を失った。まさか頼子は自分が気の使い手だという事を知っているのか。でも自分は一度も人に言った事は無い。もし頼子が知らないのに余計な事を言ってやぶへびになったら困る。でも知らないとしたら今の発言はどういう意味だ。
 武志の頭の中を色々な考えが駆け回り、頼子に返事ができない。
「武志君は、まさか、私が知らないと思っていたの」
「な、何の事ですか」
「武志君が気を使う事よ」
 頼子は知っていたのか。武志は衝撃を受けた。
「な、な、なんで知ってるんですか」
 武志はうろたえた声を出してしまう。
「最初から知ってたわよ。一条流は将軍家に鍛錬の指導をしていたでしょ。それで古文書が残っていて鍛錬内容も分かってるわ。それにあなたの体液を調べても特殊な成分は見つからなかったし、隊員からの報告もあったしで、特殊な薬品や体技ではないと分かっていたから。それから武志君のセックスをサーモグラフィーで調べると体の一部が高温になっているの。それから考えると何らかのエネルギーだと考えるしかないわ」
「じゃあなぜ俺を隊に誘ったんですか。自分達で鍛錬すればいいじゃないですか」
「将軍家へ教えていた内容は全体のごく一部なんでしょ。それに鍛錬には時間が掛かって武志君のレベルへ達するには小さい頃からの長年の鍛錬が必要なんでしょ」
 確かにその通りだ。一条流が将軍家に教えていたのは第一段階か第二段階までであるし、それさえ数年で物にできるものでもない。
「この事は他の隊員は知っているんですか」
「私以外は知らないけど、勘の良い子ならある程度は気付いていると思うわ。もちろん私から言う気は無いのよ」
 武志は頼子との格の違いを見せつけられた気がした。またもや頼子の手の上で遊ばされていたのだ。
「そんな事は気にしないで武志君は自分の技を磨けばいいのよ。他の人が真似できないほどの技を身に付ければ良いだけなんだから」
 確かにその通りだが、他人に言われると、とてもくやしく感じる。武志は何も言い返せない。
「それじゃあ、今日はこれで終わりにしましょう。報告書をよろしくね」
 そう言って頼子は武志へ紙の束を渡した。アメリカ出張の時にも書いた、相手の事についての質問事項が数百個もある物だ。そして頼子は部屋を出て行った。
 中国から帰って武志は数日間魂が抜けた状態になっていた。旅行による疲れ、奥義を使った事による体調不良、自分より上のレベルが人間がいる事への徒労感、頼子が気の事を知っていた驚き、それらの事が重なり精神的にも体調的にも乱れていた。
 だが体調が戻ってくるにつれて武志は元気を取り戻していった。頼子が言うように、今は自分の技を磨くしかない。難しい事はやる事をやってから考えれば良いのだ。頼子が知っていたからといって状況は何も変わらないのだから。
 武志は毎日のトレーニングと英語の勉強を再開した。そして週二回の純子との訓練も再開する。
 武志の大きな目標としては全ての奥義の習得と女性の気の量を測る事がある。これはすぐにできるものではない暇を見つけてコツコツやるしかない。短期的な目標としてはトレーニング量の増加とそれに伴う気の量の増加である。これはトレーナーの指導を受けながら毎日地道にやるしかない。
 いつか頼子の鼻を明かす日の事を考えながら武志は日々のトレーニングに汗を流していった。

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