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一条流の戦い:第21章

 そしてアメリカ出発の日が来た。
 武志はスーツケースを持ち空港へ向かう。中には着替えと洗面用具、薬、ガイドブック、英和和英辞書しか入っていないのでスカスカだが、帰りにはお土産でいっぱいになるだろう。
 空港には待ち合わせ時間の少し前に着いた。物珍しさにきょろきょろしているとまもなく知香がやって来た。
 武志より一回り大きいスーツケースと一抱えほどの大きさのダンボールを持っている。
「時間通りね。武志」
「それより、その荷物はどうしたんですか」
「女は男より着替えが大変なのよ」
「その、ダンボールは」
「これは、向こうへのお土産よ。まさか手ぶらで行く訳にもいかないでしょ」
「何が入ってるんですか」
「それは向こうに着いてからのお楽しみよ。さあ、先に荷物を預けちゃいましょう」
 武志は初めての海外旅行で緊張していたが手続きは全て知香がやってくれた。武志は横で見ているだけだった。
 チェックイン、手荷物検査、出国審査はドキドキしながら何事も無く終わる。搭乗まで時間が有るので二人で軽食を取る。ここまであっけなく来て、武志は肩透かしをくらった気がしていた。
「海外旅行ってもっと大変な物だと思ってましたが、意外と簡単でびっくりしました」
「ここはまだ日本だからね。まあカルチャーショックを受けるのは向こうに着いてからよ。何事も無ければいいけど、例えば空港で荷物が出てこないとか、ホテルでお湯が出ないとかになったらどうする」
「そんな脅かさないでくださいよー。知香さんが一緒にいてくれるんでしょ」
「ただ覚悟だけはしとかないとね。最後は自分しか頼るものは無いからね」
 話をしているうちに搭乗時間になったので飛行機へ乗り込む、この日一番驚いたのが座席だった。ビジネスクラスだと聞いていたので新幹線のグリーン車 (乗った事は無いが、見た事は有る)くらいかなと思っていたら、それよりよっぽど豪華だった。高校の卒業旅行で深夜長距離バスに乗った事が有るが、それより足が伸ばせる。どちらも乗っている時間は同じ位なのに、この違いは何だ。
 周りは三十代以上のビジネスマン風の人や金持ちそうな人ばかりで学生の武志が浮いて見える。場違いな所にいる気がして落ち着かない。
「武志は日本代表でいくんだから、もっと堂々としてなさい。体調管理も大切なんだから」
 知香が気を使って話しかけてくれる。そして窓際も譲ってくれる。
 とうとう飛行機が出発する時間が来るが、武志は日本を離れる実感が無い。日本の航空会社で乗務員も日本人、客もほとんど日本人なので仕方が無い。それでも日本を離れると思うと感慨深いものが有った。

 飛行機に乗っているのは約十時間。結構退屈だった。映画を見たり、新聞や雑誌を読んだり、食事をしたり一通りやると、する事が無い。だが、思ったより良かったのは機内食だった。機内食は思ったより美味しい。大学の学食に慣れている武志にすれば十分なご馳走だ。食前酒、前菜、メイン、デザートとコース料理になっていた。
 満足している武志を横目に知香は機内食は今一つねと言っている。
 日本時間で午前零時をすぎる頃になると武志は眠くて仕方がなかった。規則正しい生活をしている武志は毎日十一時に寝て五時半に起きる。それから朝のトレーニングを始める。乗り物による疲れや退屈な事もあり、ついうとうとしてしまう。その度に知香に起こされる。
「時差ぼけしないコツはとにかく移動中に寝ないことよ」
 知香が鬼のように思えてくる。
 二回目のミールサービスを半分眠りながら食べる頃には窓の外は完全な朝で、少しずつ元気が湧いてくる。だんだんアメリカ大陸が近づいてくるにつれ武志は興奮してきた。今から会うアメリカの相手の事も想像してしまう。
 やっぱり金髪で青い瞳の巨乳さんが来るのかとか、外国人は初めて(クォーターは有る)だが秘肉の具合が違うのかと、股間に血が集まりそうになる。時差ぼけでも疲れマラで立っちゃうのかなとつまらない事を考えている内に飛行機は着陸態勢に入る。
 飛行機は何事も無く着陸し、武志達は飛行機を降りターミナルに入る。そこで初めて武志は外国へ来た事を実感した。
(日本語が無い)
 当たり前だが案内は全て英語で、他にスペイン語らしき物がある。アナウンスも英語である。多少は聞き取れるかなと思っていた武志の予想を裏切り、何を言っているのかほとんど分からない。所々単語が分かる程度だ。
 武志はきょろきょろしながら知香に付いて行く。入国審査は少し心配したが、知香に教えられていた『サイトシーイン、シックスデイズ』で乗り切る。
 荷物を受け取り到着ロビーに出ると外人だらけだ。本当に来たんだ。武志はなぜか感動してしまった。
 知香は荷物をカートに載せ、迎えの人を探している。そして目当ての人を見つける。
 "Chika and Takeshi" と書かれた大きなボードを持っている男がいる。
 武志よりさらに背が高く180cm以上あるだろう。アメフトでもやってそうな筋肉質の男で、ブロンドに青い眼の武志が思い描く典型的なアメリカ人だ。
 早速知香と握手をしている。
「コンニチーハ、タケーシ」
 武志の方を向くとごつい手を差し出してくる。武志が手を出すと、すごい力で握ってぶんぶん上下に振る。
 典型的な日本人である武志は恥ずかしがりながらも手を握り返す。
 知香によると名前はマイクでアメリカ側の担当者らしい。知香と英語で何かを話しながら、たまに武志に顔を向け笑いかけてくる。身振りも大げさで、まるで映画に出てくる無駄に陽気なアメリカ人だ。
 知香の通訳によると、今からホテルへ行き荷物を置いてすぐに観光に行くそうだ。これは武志から知香に頼んでいた事だ。アリバイ工作で色々な所で写真を撮っておかないといけない。プロに任せれば絶対見破れない合成写真を作ってくれるのだろうが、他にやる事も無いので実際に行く事になっている。
 マイクが用意した車へ荷物を載せ三人で乗る。マイクが運転、知香が助手席、武志が後ろになる。車も無駄に馬鹿でかいセダンだ。だが、この位大きくないとマイクの体がつかえるのかもしれない。
 車は空港を出てハイウェイを飛ばす。道路は広く、空は青い、空気は乾燥している。武志はこれがアメリカかと感慨が深い。
 しばらく走った後、市街地に入り一軒のホテルの前で停まる。概観はそこそこ高級そうなホテルである。
 武志がドアを開けて降りようとするとドアマンに車のドアを開けられ武志はうろたえてしまう。予想外の攻撃にこそこそと車を降り知香の後を付いて行く。後ろではベルボーイが車からスーツケースを降ろしている。
 チェックインの後、ボーイに案内されながら部屋へ向かう。マイクはロビーで手をひらひらと振っている。あそこで待っているのだろうか。
 案内された部屋はツインでかなり広かった。ダブルベッドかと思うようなベッドが二つとソファーセットに机がある。
 横では知香がボーイにチップを渡している。
 二人きりになったので知香に聞いてみる。
「知香さん、チップ渡すの慣れてますね」
「何回か来た事あるから」
「知香さん、アメリカに来た事があったんですか」
「何度か任務で来たわよ」
「えーっ、知りませんでしたよ」
「そりゃ言ってないんだから知る訳無いでしょ。任務の事は教えられないの」
 そんな当たり前の事を聞くなという顔である。
「それよりお化粧直したら下に降りるわよ。マイクが待ってるから」

 それからマイクに連れられての観光が始まった。マイクはアメリカにいる間の世話係も兼ねているそうだ。マイクの運転で車に乗りながら彼の観光案内を聞く。それを知香が通訳してくれる。
 車に乗ったまま、チャイナタウンやリトル東京を見る。まだ日本を離れて一日も経っていないのに早くも懐かしく感じてしまう。
 昼食はマイクのお勧めという事で道路脇で売っているホットドッグになった。LAに来たらこれを食べないといけないらしい。パンとソーセージだけで他には具が無いが何でも本場は美味しい。またコーラにとても合う。
 昼からはLAで一番高いというライブラリータワーに昇って中心部を一望する。
 その後は知香の希望でビバリーヒルズへ行く。ロデオ・ドライブでお土産を買わないといけないそうだ。きっと隊員の仲間に頼まれたのだろう。武志とマイクはうんざりしながら知香に付き合う。この時二人は目と目で通じ合った。
(まったく女の買い物には付き合えないな)
(俺もそう思うよ)
 武志も知香お勧めの店でお土産用にTシャツを買った。このブランドは日本で人気急上昇中でなかなか手に入らず、しかもここでしか売っていないレア物もあるそうだ。
 次に入った高級ブランド店で若い男が自分しかいないのに猛烈な違和感を感じながらも両親のお土産に携帯ストラップを買う。マイクに聞くとアメリカ人はそんなの付けないとの事なのでアジア系向けの商品なのだろう。おそろいで二個買うと結構高い。ここまでで、持ってきたドルの半分を使っている。これからは節約しないといけない。
 その後も何件か店を周り二時間以上は買い物をしていた。
 それにしても知香はタフだ。時差ぼけって何という感じで精力的に買い物をしている。武志は自分の分の買い物を済ますと手持ち無沙汰で眠くて仕方が無い。途中でビバリーヒルズのスター自宅マップという怪しい物を買い眠気覚ましに見る。ほんとか嘘かは分からないが武志も知っている名前がゴロゴロ出ている。
 ようやく知香の買い物が終わる頃には既に夕方になっていた。一旦ホテルに戻り荷物を置いた後、夕食に出かける。
 マイクがアメリカへ来てステーキを食べないのはおかしいと言い出してステーキに決定されてしまう。
 マイクが当たり前のようにTボーンの1パウンド(454g)を注文する。武志も同じ物でいいだろと勝手に決められてしまう。知香は1/2パウンドだ。
 運ばれてきた肉を見るとさすがにでかい。それに加えて付け合せのポテトの量が半端じゃなく多い。マイクは当たり前の様にポテトが見えなくなるくらいケチャップを掛けている。
 肉は少し固めだが確かに美味しい。肉の味が濃い気がする。武志はがんばって肉を全部食べたがポテトは残してしまう。それを見てマイクが言った。
「武志、もう食べないのか。そんなに少食で大丈夫なのか。ハハハ」
 本気なのかアメリカン・ジョークなのか、どちらか分からない。
 夕食を終えホテルに戻ると武志はもうふらふらだった。時差ぼけで眠く、マイクの陽気さにあてられ、知香の買い物に疲れ、夕食の食べすぎで苦しい。一刻も早く横になりたい。
 知香にお願いして先にシャワーを浴びさせてもらうと、髪を乾かすのももどかしくベッドへ横になる。せめて知香が出てくるまでは起きていようと思っていたが、あっと言う間に武志は眠りについてしまった。

 翌朝武志が起きたのは朝の八時だった。九時頃に寝たはずだから十一時間も寝ていた事になる。武志がこんなに寝るのは病気の時くらいで、しかもここ何年かはほとんど風邪もひかないので、かなり久しぶりだった。たくさん寝たおかげで、あたまはすっきりして体が軽い。時差ぼけもほとんど治っている。
 知香が起きるのを待って二人で朝食に出かける。バイキング形式で、これは日米あまり違いが無い。あえて違いをあげると武志が見た事が無い料理がある。知香はメキシコ料理だろうと言う。興味は有るが辛そうだし、万が一お腹を壊しても困るので、普通にパン、ベーコン、サラダ等を食べる。知香も似た様な物を食べている。
 マイクは十時に迎えに来た。今日は武志の要望で最初にディズニーランドへ行く。遊ぶわけではなく、証拠写真を撮るためと、お土産にグッズを買うためだ。片道約一時間車に乗り、写真を撮り買い物をすると、また一時間掛けて中心部に戻る。非常に慌しい。本来五日の観光を二日でやるのだから仕方が無い。
 今日の昼食はマイクの提案でピザになった。お勧めの店があるらしい。
 なぜピザなのかとマイクへ聞くと、
「だって、ピザの本場はアメリカだろ」
 また本気なのか、アメリカン・ジョークなのか分からない事を言う。
 連れて行かれた店で出てきたピザは予想通りにでかかった。一人に一枚、日本の宅配ピザのLサイズが出てくる。しかも上には具がてんこ盛りになっている。チーズ、ハム、ソーセージ、ベーコン、トマト、ポテト、……。
 武志は3/4、知香は半分でギブアップした。マイクはもちろん全部食べている。
「武志、もっとたくさん食べないと強くなれないぞ。日本ではそう言わないのか?」
 いい加減、マイクのジョークには疲れてくる。
 昼食後はハリウッドへ向かう。有名なHOLLYWOODの巨大看板を見たり、チャイニーズシアターで手形を見たり、ウォーク・オブ・フェイムの星型の敷石を見たりする。知っているスターを探そうとするが数が多いので途中で飽きてしまう。最後にグリフィス天文台へ行き、LAの街を見渡す。ここからはLAが眼下に広がりとても見晴らしが良い。夜にもう一度来て夜景を見たくなる。
 今日は夕方から少人数のウェルカム・パーティーがあるという事なので早めに戻る。

 ノーネクタイで良いという事なので、武志はジャケットを羽織りそれなりの格好をする。ただしネクタイをしようにも武志は持ってきていなかった。
 知香は体の線がよく分かる黒のワンピースだ。相手を威嚇するモードに入っているのだろう。
 マイクの運転で二人が連れて行かれたのは郊外の一軒家みたいなレストランだった。
 庭にテーブルが出され料理やお酒が並べられている。立食形式だ。
 集まったのは全部で六人。知香と武志とマイク、それに責任者らしき中年の男と若い男女の二人だ。
 中年の男はけっこうな男前で若い頃はかなりもてたと思わせる。いまでも体形には気を使っているらしく、腹はぜんぜん出ていない。アメリカの官僚なのだろう。禁煙にダイエットと大変そうだ。
 若い男はいかにも東部エスタブリッシュメントという雰囲気をぷんぷんさせている。身長は武志よりも高くマイクとおなじ位。体は引き締まっていて、かつ胸板は厚い。いかにもジムで鍛えているという体だ。ブロンドの髪をきれいに流し、女モテしそうな甘く知的な顔をしている。服装や動きからは上品さが少し嫌味を感じるくらい滲み出ている。もちろん瞳はブルーで肌は白い。どこかの金持ちの息子で勉強もスポーツも何でもこなす完璧超人という感じだ。
 女の方はいかにも雑誌のグラビアに出てきそうな、セックスアピールの強い人だ。ヒールの高いパンプスを履いていて目の位置が武志より高い。170cm以上ありそうだ。巨大な胸が服を高く持ち上げている。胸元の大きく開いた服から胸の深い谷間がよく見える。ウエストは細く、尻は大きく、俗に言うミツバチ体形だ。顔も男を誘う色気たっぷりだ。少し垂れ気味で濡れた青い眼と厚めの下唇がとても淫靡な感じを出している。そしてブロンドのロングヘアーを背中に垂らしている。
 白い長袖の開襟ブラウスと紺のタイトミニという真面目なビジネスウーマンの服装がエッチな体を強調している。見るだけでお腹がいっぱいでもう結構ですというゴージャスさやくどさが有る。
 お互いの紹介で名前が分かった。中年の男はやはり責任者でジョージ、若い男がアレックス、若い女はアンナだ。この若い男女が明日の武志と知香の相手になる。
 まずは乾杯という事で知香が持ってきた日本酒が各自に注がれた。純米大吟醸の高そうなやつで、きっと知香のお気に入りなのだろう。
 最年長と言う事で責任者のジョージの挨拶があった。
 知香の通訳によると、要するに仲良くやろうという事らしい。武志も異存は無い。
 知香が買ってきた酒はとても美味しかった。香りが良く、少し甘く、飲みやすい。食前酒にぴったりだ。
 乾杯が終わった所で知香が持ってきた他のお土産が配られた。箱は三個あってまずは一番大きな箱だ。
 ジョージが代表して箱を受け取る。紙包みの中はアクリルケースに入った30cm位の美少女フィギュアだった。
 童顔、巨乳の青の長髪でミニスカ戦闘服を着ている。
 アメリカ人に理解できるのか、というよりもらってうれしいのか。武志は頭を抱える。
「オウ、オターク、ロリコーン、モエー」
 マイクが意味を分かって言っているのか、喜んでいる。等身大フィギュアが美術品として扱われたりする国だから意外と受けるのかもしれない。だが、アレックスとアンナは明らかに引いている。
 二番目の小さい箱をアンナが受け取る。中には組紐にとんぼ玉が付いた携帯ストラップが十本位入っていた。武志はとんぼ玉をネット上では見た事があったが、実物を見るのは初めてだ。一つを手にとって見てみると意外ときれいなのに驚いた。プラスチックとは違うガラスの質感が高級感を出している。武志も一つ欲しくなった。後で知香にどこで買ったか聞いてみることにする。
「a charm against misfortune」
 知香がみんなに説明している。アメリカ人は携帯ストラップを使わないらしいが、これならバッグなどにも付ける事が出きるし、女性には喜ばれるだろう。
 最後の三番目の小さい箱をアレックスが受け取る。中には寿司の食品サンプルのミニチュア版が付いたキーホルダーが十個位入っていた。店頭のガラスケースの中に入っている物のミニチュア版だ。
「オウ、スシ・キー・リング!」
 またもマイクが喜んでいる。これならアメリカ人にも分かりやすい。お土産はこれだけで良かったんじゃないかと武志は思う。さっきのとんぼ玉が女性用ならこっちの寿司キーホルダーは男性向けだ。そう考えると、フィギュアを除いて知香の趣味は結構良い。
 お土産の披露が終わると、全員で立食パーティーになった。会話のできない武志は自然と食べるの専門になり、人の中心は知香になる。それでもアレックスとアンナが時おりチラチラ視線を投げてくる事があった。
 こんな男が日本の代表とは日本の組織はたいした事ないな。この男なら私の魅力で明日はメロメロにしてあげるわ。そんな言葉が伝わって来そうだった。
 マイクが皿に料理をいっぱい盛って武志の側にやって来る。こんな時はマイクの陽気さがありがたい。
「タケーシ、いっぱい食べないと強い子になれないぞ」
 この人は俺が二十一だと分かっていないのか。
 武志が片言の英語でマイクと話をしていると、知香とジョージがやって来た。
「武志、ジョージが何か一言話をしてくれだって」
 ついに来た。知香に何度も練習させられた、英語のスピーチを使う時が来た。
 一回深呼吸してから武志は拙い英語で話し始めた。
「今日は私達二人を歓迎して頂きありがとうございます。これだけでも日本から来た甲斐があります。それに昨日と今日はマイクにLAを案内してもらいアメリカの偉大さをあらためて実感しました。これで観光は終わったので日本に帰ろうと思っていたのですが、このパーティーで大切な仕事が有るのを思い出しました。明日からは全力を出して、東洋の神秘とサムライの技をお見せしたいと思います。それが日米の友好・お互いの発展に繋がれば幸いです。どうもありがとうございました」
 お義理の拍手がパチパチ鳴る。多分及第点はもらえたのだろう。
 次に知香が流暢な英語でスピーチを始める。
 武志は聞いていても半分も分からないが、途中でクスクスと笑い声がして、最後にみんが普通の拍手をしていた。きっと良いスピーチだったのだろう。
 その後は知香の通訳でジョージ、アレックス、アンナの三人と挨拶をした。完全な社交辞令だけで、特にアレックスとアンナは興味の無さそうなのがバレバレな感じだ。多少は期待していたのに、やって来たのがパッとしない若者だから、余計にがっかりして興味を無くしたのだろう。
 武志は明日からの実践で分かってもらうしかないと思っていた。もし自分が逆の立場で、自分みたいなのがきたらやはりがっかりするだろう。

 簡単なパーティーは明日に備えて一時間ちょっとで終わった。
 帰りの車の中でマイクと知香が武志を慰める。
「すまないな、タケシ。東部の奴らはいつもあんな感じなんだ。俺達西部の人間さえ見下してるからな」
「そうよ、あんたの実力は私が一番分かってるから、明日は自信持ってぶつかりなさい」
 武志は最初から予想していたので、そんなに落ち込んでいなかったが、二人の慰めがうれしいので、素直に喜んで見せた。
 ホテルに戻り交代でシャワーを使うと、時間は十一時近かった。電気を消し二人はそれぞれベッドに入る。武志はベッドの中で明日からの事を考えていたが、いつもの習性でいつの間にか眠ってしまった。

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