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丹波学園物語:第2章

 翌日の放課後、綾乃は国語資料室へ向かっていた。詩織から、もう一人のメンバーを紹介するからと言われていた。
 昨夜聞いた話では、詩織は生徒会の用事が無い時は、たいてい資料室にいるそうだ。もう一人の二年生はバレーボール部に入っていて、部活が無いときに、ちょくちょく顔を出しているらしい。
 今日は部活が無いはずなので、資料室に来るように伝えておくということだった。
 部屋に着きドアをノックしても返事が無いので、綾乃は鍵を開けて中に入った。鍵は昨日のうちに詩織からもらっていた。誰もいない部屋に一人で入ると、何もやましい事は無いのに悪い事をしているような感じでドキドキしてくる。
 綾乃は一人椅子に座り、朝からの事を思い出していた。
 朝早く詩織に起こされ自分の部屋に戻ってから、身支度を整え食堂で朝食を食べた。決まりは無いようだが、ほとんどの生徒が制服に着替えてから朝食をとっているので、綾乃もそれに合わせている。
 それから登校してみるとクラスは綾乃の噂で持ちきりだった。綾乃が席へ着くなり、周りに人だかりができた。
「佐伯さん、昨日三原先輩の所へ行ったんだって。何しに行ったの?」
「三原先輩とお話したの? ねえ、どうだった? どんな感じの人だった?」
「三原先輩のお部屋にお泊りしたって本当? 寮で先輩の部屋の方へ歩いていくのを見たって人がいるんだけど」
 矢継ぎ早に質問を浴びせかけられ、こんな事に慣れていない綾乃は戸惑い返事ができない。オロオロと周りの人を見渡すだけだ。
 見るに見かねて、リーダー格の少女が助け舟を出した。
「そんなに一度に質問したら、佐伯さんも答えられないでしょ。質問は一人ずつね」
「じゃあ、あたしから。三原先輩と何のお話したの」
 いかにも好奇心の固まりのような積極的な少女が一番に手を上げて、綾乃へ質問した。
「え、え、えーと、あのー、研究会に入れて欲しいってお願いしたの」
 ええーとか、やっぱりーとか、つぶやく声が聞こえる。
「それって、あの中国文化研究会。今まで何人もの人が断られてきたっていう伝説のサークルなのよ。それで、それで、どうなったの」
「あ、うん。入れてもらえるって」
 綾乃は恥ずかしそうに答えた。
「うそー。ほんとに。すごーい」
 周りから大きなどよめきが上がる。中には教室を飛び出して、他のクラスへ報告へ行くものまで居た。
「うん。各学年一人で一年生からも選ぶつもりだったからって」
 綾乃は少しだけ誇らしく思い始めていた。周りの騒ぎからすると、研究会に入るのは自分が考えていた以上に大変なことだったようだ。
「すごいよー。佐伯さんの綺麗さは並じゃないと思ってたけど、やっぱり凄かったんだねー」
「あの完璧な生徒会長に選ばれたんだよ」
「やっぱり、あの会は各学年代表の美女ナンバー1しか入れないって噂は本当なんだ。だって先生も三年生もすっごい美人だもん」
「二年の人もすっごい美人だって話だよ」
 周りは綾乃そっちのけで騒いでいる。綾乃本人よりも周りの方が興奮しているようだ。
「じゃあ、次のしつもーん。昨日は三原先輩のお部屋にお泊りしたんですか?」
 さっき質問した子とは別の子が手を上げている。
「う、うん」
 綾乃が答えたとたん、騒ぎがさらに大きくなった。
「キャー」
「禁断よ。禁断」
「ねぇ、姉妹《スール》になったの? ロザリオ貰ったの?」
「やっぱり、お姉さまって呼ぶの?」
 生徒達は入学して一週間、女子校の雰囲気に慣れつつあったところへ、燃料のように甘い事件の話が湧いてきて、一気に興奮が燃え上がってしまっていた。マンガのような女性同士の関係はめったにないと頭の中では分かっていても、心のどこかで期待している彼女達にとって、美少女同士のビッグカップル誕生は格好の話のネタだった。
 騒ぎは先生がやってきて授業が始まるまで続いた。その後も、騒ぎは治まることなく、休憩時間のたびに続いた。昼休みには他のクラスの生徒までやってきて、綾乃は一躍時の人になってしまった。
 この騒ぎから綾乃が抜け出せたのは放課後になってからだった。研究会に行くからとようやく抜け出せたのだ。だが、それも『お幸せにー』とかの冷やかし付きだった。

 綾乃が一人思い出しながら、恥ずかしさに身悶えていると、ドアがノックされた。
 急に現実に引き戻され、何て返事して良いか分からず、綾乃は思わず『はいっ』と返事した。
 入ってきたのは綾乃の知らない女生徒だった。多分研究会の二年生なのだろう。
 背が高い。香先生と同じくらいで170cmはありそうだ。ショートヘアーがとても似合っている。いかにも下級生に人気がありそうな感じだ。マニッシュというかボーイッシュで中性的な雰囲気が有る。
 こんな男前な人に可愛い感じの制服は似合いそうもないのだが、ブラウスの上二つのボタンをはずし、腕まくりをして、ジャケットを肩にかけていると、公式のようにピタッとはまっている。狙っているのかというくらい、その格好が似合っている。
 また雰囲気に似合わず胸が大きい。ブラウスの胸元から胸の谷間が見えそうだ。
 もちろん顔も良かった。美しいという感じではないが、非常に整っていて、透明感や清潔感がある。一言で言うと美少年のような顔をしている。
 詩織とは違うタイプの先輩に綾乃は目を奪われていた。彼女がもし男なら一目で恋に落ちてしまうかもしれない。
「佐伯綾乃さん?」
「はいっ」
「こんにちは、八本松七海《はちほんまつななみ》です。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 綾乃は飛び上がるように立ち、お辞儀をしながら答えた。
「そんなに緊張しなくて良いのよ。私の名前って変でしょ。末広がりの八にラッキーセブンの七って、半分冗談で親が付けたから」
「そんなことないです。素敵なお名前で一度聞いたら忘れません」
「そうなのよ。名前を覚えられやすいってとこだけは気に入ってるけど。私のことは七海って呼んでね」
「じゃあ、七海先輩」
「呼び捨てでも良いのに。みんな七海って呼び捨てよ。ひどいのは『ナナ』とか『ナー』とか言うんだから」
「でも、先輩ですから……」
「まあいいわ。それより綾乃ちゃんは綺麗ね。詩織さんが選んだだけあるわ。今日は学校中が綾乃ちゃんの噂で持ちきりよ」
 七海が綾乃のほうに擦り寄りながら言った。
「そんなこと無いです。詩織先輩や七海先輩の方が、ずっと綺麗です。それに選ばれたなんて。私のほうから無理を言って、入れて頂いたんです」
「そっか、聞いてないんだね。ここだけの秘密だよ。私が教えたって言ったらダメだからね。綾乃ちゃんのことは詩織さんが入寮式や入学式のときから目を付けてたの。新入生にすっごく綺麗な子が居るって」
「えっ、そうなんですか」
 思ってもいなかった話に綾乃はびっくりしてしまう。
 それが本当なら入学式の時に目が合ったのは気のせいではなかったのかもしれない。
「そうなの。綾乃ちゃんは一年生の中で断トツ可愛いんだから、もっと自信持って良いのよ。私みたいに男顔の女より、よっぽど可愛いわよ」
「そんな、七海先輩みたいな素敵な人を今まで見たことがありません」
 綾乃は本気で反論した。
「まあ、可愛い事を言ってくれるじゃない。きのう部活がなかったら、詩織さんなんかのおもちゃにさせなかったのに。昨日は詩織さんにチューされたんだって。今日の昼休みに詩織さんが自慢しに来たわよ」
 七海は綾乃のあごに手を掛け、自分の方を向かせると顔を近づけていった。
「私からもお近づきの印に挨拶ね」
 そう言って七海は綾乃にキスをした。片手で綾乃の頭を押さえて、片手を背中に回して熱烈なキスをする。
 綾乃はあっという間に溶かされてしまった。昨日の詩織や先生とのキスと違い、激しいキスだった。口の中で七海の舌が暴れている。
 そして、舌が七海の口の中へ吸い込まれた。七海の口の中は熱くて舌が溶けそうだった。唇で舌をしごかれ、七海の舌が絡み付いてくる。
「ん、んんー、んんんー……」
 息が苦しくなり逃げようとするが、七海の力は強く逃げられない。綾乃の抵抗はすぐに小さくなった。
 頭の中が白くなっていく。そして七海の体が触れている所が熱くなっていく。背中が、口が燃えそうだ。膝がガクガクして立っていられなくなる。もう気を失ってしまうんじゃないかと思い始めた頃、突然声が聞こえた。
「綾乃ちゃんは私が先に目を付けたのよ。横取りは良く無いわ」
 七海の手が緩んだので、口を外し声のほうを見ると、いつの間にか詩織が立っていた。
 七海とキスしているところを見られたと分かって、綾乃は猛烈に恥ずかしくなった。
「可愛い子はみんなで共有するんでしょ。先生も前に言ってたじゃないですか。単なる挨拶ですよ」
 七海がしれーっとした感じで答える。
「まあいいわ。挨拶はもう済んだみたいね。全員揃ったからお話を始めましょうか」
 詩織の声で全員が椅子に座る。
「あのー、香先生は」
 綾乃はまだドキドキが治まらないが、香がいないのが気になり聞いてみた。
「先生はお忙しいから、毎回来られるわけじゃないの。でも隣の部屋にいらっしゃる事が多いから。用事がある時は訪ねてみればいいわ」
「分かりました」
 また今日も香先生を見られるものと思っていたので、綾乃は少しだけがっかりした。でも詩織と七海が居るだけでも、とても贅沢なことなんだと思い直す。
「今日はこの会について色々決めましょうか。今までは私と七海の二人だけだから、特に何も決めてなかったけど、綾乃ちゃんにしたら不便なこともあるでしょうから」
「さんせーい」
 七海が手を上げる。
「七海の部活は毎週火曜と木曜だったわね」
「うん。それと、試合前は練習が増えるけど」
「じゃあ、集まるのは毎週月水金で良いわね。私も生徒会の仕事はなるべく火曜か木曜日に片付けるようにするから」
「はい」
 部活も生徒会も無い綾乃に不満は無い。毎日でも集まりたいくらいだ。
「それから綾乃ちゃんに活動内容を説明すると、この会は学校に認可された部活じゃなくて、私が個人的に始めた集まりなの。だから学校から部費を貰ってるわけでも無いし、この部屋も香先生にお願いして使わせてもらってるだけなの」
 綾乃はうなずきながら話を聞く。この辺りの話は噂で何となく知っている。
「中国文化研究会って言う名前も、香先生に顧問みたいな事をしてもらってるから付けただけで、別に中国について調べたりしてるわけじゃないの。ただ、集まっておしゃべりしたり、遊んだり、たまに香先生から英語や書道を習ったりしてるだけで、これといった活動はしていないわね」
「私は先輩達とお話できれば何でも良いです」
 詩織が言葉を区切り自分の方を見ているので、綾乃は言った。
 それを聞いて、詩織はうふふと軽く笑った。
「でも毎週金曜日に気の先生が来られるので、気の練習をしているの」
「えっ、『き』って、植物の木ですか?」
 綾乃は『き』と聞いて、木の事を思い浮かべていた。何で木の練習。ガーデニングか何かかと思う。
「違うの。気功の気よ。一言で言えば健康法ね。これを覚えたら、疲れが取れるし、健康になるし、集中力が増すの」
 詩織が漢字で紙に書きながら説明する。
「たしかに、スッキリするね」
 七海がニヤニヤしながら言うと、詩織が軽く睨んだ。
「今日は水曜だから、あさっての金曜日に気の先生を紹介するわね」
「はい、分かりました」
 別の先生と聞いて綾乃は期待が膨らんでしまう。詩織が呼ぶのだから香先生みたいに綺麗な人だろうか。それとも気功の先生というくらいだから、女武闘家タイプかなと想像をめぐらせた。
「それじゃあ、今日はこのくらいにして、遊びに行きましょうか」
「行こう、行こう。ぱーっといこう。カラオケがいいー」
 七海が大きな声で主張する。
「綾乃ちゃんはカラオケで良い?」
「はい、大丈夫です」
 詩織の問いかけに綾乃は断れない。それに、自分で歌うのは嫌だが人が歌うのを聞くのは嫌いじゃないし、先輩達の歌は是非聞いてみたい。
 はしゃぐ七海を先頭に三人は学園敷地内のカラオケボックスへ向かった。

 千葉市郊外の田舎に在るこの学園は広大な敷地の中に各種の施設が揃っている。食堂やコンビニはもちろん、本屋、文具店、ヘアサロンにカラオケもある。さらに来年大学が開学するのに合わせて、ビデオレンタルやセレクトショップなど色々増える予定になっている。
 近隣に遊べる所はほとんど無く、街の中心部まで片道一時間近くかかるので、どうしても敷地内に各種施設が必要になるのだ。現時点でも生徒と教職員が千人以上居る。これだけの人数の欲求を満たそうとすると、かなり大変だ。
 さすがに、学園側だけではカバーしきれず、通販が大流行することになる。寮には毎日、山のように段ボール箱が届く。一人が月に一回通販をすると、毎日四十箱以上が届くことになる。それに加えて家族からの仕送りもあり、寮の職員も受け取りで非常に忙しい。
 これらの運営に高等部の生徒はバイトで参加する。高等部の生徒は親の許可があれば学園内で自由にバイトをして良いことになっている。試験前と試験中は禁止されるが、それ以外は禁止されていない。むしろ推奨されていた。
 生徒の中には、幾つものバイトを掛け持ちしている者も居る。そこには、学園が辺鄙なところにあるため、生徒のバイトを認めないと人手が足らないし、他にバイト先が無いという理由もあった。
 カラオケは学園内の数少ない娯楽の一つである。そのためいつも人で溢れている。この時期は歓迎会も行われるため特に混んでいた。
 三人が行ったときも何組かの生徒が順番待ちをしていたが、詩織と七海の姿を見ると喜んで順番を譲ってくれた。
 上級生が来たら譲らないといけないという暗黙のルールは無かったが、詩織と七海は別格のようである。
「どうもありがとう」
 詩織は丁寧にお礼を言い、七海は全員に一人ずつハグした。
 三人が通されたのは少人数用の部屋だった。まだできて二年だし、女子生徒向けの内装は綺麗で明るく清潔だ。
 まずは学年順ということで、詩織、七海、綾乃の順で歌うことになる。
 詩織も七海も最新のヒット曲を歌う。綾乃は二人の歌声に聞き惚れてしまった。天は二物も三物も与えるのだと感心してしまう。詩織は学年でもトップクラスの成績らしいし、生徒会の仕事もしている。いつ歌の練習をするのだろうかと思う。
 綾乃は少し古いが定番の曲を歌う。カラオケは好きでも得意でもないが、中学時代どうしても断れない時に歌っていた数少ない持ち歌だ。自分ではあまり上手く歌えなかったと思ったが、二人は拍手をして褒めてくれた。
 綾乃は面映くなってしまう。
「綾乃ちゃん、見かけは大人しいのに、けっこうやるじゃない」
「なかなか渋い選曲だねー。綾乃にぴったりじゃない」
 一巡の後は、七海が次々に歌いまくった。その合間に詩織が歌う。綾乃は聞いてるだけだが、それだけで幸せな気持ちになれた。この二人を独り占めにしていると思うだけで満足だった。
 二時間が経ち、寮の夕食の時間が終わりそうなところで、お開きになった。
 綾乃はカラオケ代の割り勘分を出そうとしたが、歓迎会だからと詩織と七海は受け取らなかった。そして別れ際に七海は綾乃の耳元でささやいた。
「今日の夜は私の部屋に来てね」
 七海はそう言って、メモを綾乃に握らせた。
 二人と別れてから、綾乃はどうしようかと悩んでしまう。七海の部屋に行くのは詩織を裏切るような気がして、乗り気がしない。しかし、先輩の誘いをむげに断ることもできない。詩織に相談しようかとも思ったが、七海がこっそり言ってきたということは詩織には秘密にしろということだろう。
 綾乃は夕食を食べているときも、お風呂に入っているときも、上の空だった。同級生で話しかけてくる者も居たが、綾乃が生返事ばかりで様子がおかしいので、首をかしげながら離れていった。
 綾乃が悶々と悩んでいるうちに時間は進み、九時になった。行くとしたら、そろそろ部屋を出ないと遅くなってしまう。綾乃は意を決して、七海の部屋へ向かった。
 入浴後なのでパジャマにカーディガンを羽織っている。この寮では朝起きたら制服に着替えて朝食、学校から帰ってきたら普段着に着替えて夕食、入浴後にパジャマに着替えるのが普通だ。特に規則があるわけではないので、今の三年生、二年生が生活するうちに自然と習慣が固まっていったのだろう。
 七海の部屋をノックすると、どうぞという声が聞こえた。中に入ると七海が一人で音楽を聴きながら待っていた。綾乃とは違って黒のスウェットの上下を着ている。
「ようこそー」
「お邪魔します」
 部屋は綾乃の部屋と全く同じレイアウトで、同じ家具だった。それでも部屋の雰囲気は全く違う。綾乃の部屋は普通の女の子らしく、可愛い小物がたくさん置いてあり、本好きなので本の数も多い。七海の部屋はすっきりシンプルで生活感が薄い、それで音楽が好きなのかCDが大量に置いてある。
「昨日は詩織の部屋に泊まって、たくさんおしゃべりしたんでしょ。私も綾乃ちゃんと仲良くなろうと思ったの。今日は泊まっていってね」
「はい」
 綾乃は乗り気がしないが、仕方が無いとあきらめていた。詩織の部屋にだけ泊まって、七海を断るわけにもいかない。
 詩織と綾乃は二人で音楽を聴きながら床に座り色々話をした。七海は性格からかとてもおしゃべりで、ほぼ一方的にしゃべっていた。
 綾乃はあまり話さなくて済んでほっとしながら、七海の話を聞いていた。綾乃は自分から話すのはあまり好きではないが、人の話を聞くのはけっこう好きだった。
「それでさー、働きながら夜間高校に行こうか悩んでいたら、この学校の事を知ったのよ。ものは試しで受けたら、通っちゃうし、入学金も学費も寮費も全部ただにしてくれるって言うから、ここに決めたの」
 そうなんですかと相槌を打ちながら、綾乃は感心していた。自分も成績は良いほうだが、学費が免除になっているだけで、寮費までは免除になっていない。ということは七海は自分よりも成績が良いことになる。
 見た目は体育会系の美少年だけど、歌は上手いし、勉強もできる。こんなところに居るのが不思議に思えてくる。綾乃は七海に対する見方が変わってきた。
 最初がディープキスから始まっただけに、ちょっと変わった軽い人だと思っていたが、話を聞くとけっこう苦労人だということが分かった。
「それで普段はお金がかからないから部活ができてるけど、夏休みとか冬休みにまとめてバイトして、お小遣い溜めてるの。でも困るのが服なんだよねー。私、背が高いから中々人からもらえないのよ。古着屋さんにもサイズが合うのが少ないのよ。仕方ないから男物を着てるんだけどね。せっかく休みにバイトしても服を買ったら終わっちゃうのよ」
「そうなんですか」
 綾乃は普通の家の子供なので、それなりにお小遣いの悩みはあったが、バイトをするほどではない。
「話が暗くなったから、楽しい話をしよっか。綾乃はどんなタイプの男の子が好き?」
「男の人は嫌いです。みんないやらしい目で見るから」
「そうなんだ、それはもったいないね」
 綾乃はもっと普通に生まれてきたかったと他人が聞いたら怒りそうな贅沢な悩みを持っているだけに、もったいないとは全然思えない。
「じゃあ、綾乃はオナニーとかしてるの」
「そんなのしません」
 突然の卑猥な話に綾乃は面食らってしまう。今まで、そんな話を友達としたことはない。綾乃にも人並みの好奇心はあるので、自分で試したことはあるが、それほど気持ち良いとは思わなかった。
「えー、ほんとかなぁ。高一にもなって、やったことが無いことは無いんじゃない。確かめてみようかな」
 七海はそう言うと、いきなり綾乃を押し倒した。
 綾乃が慌てていると、口を塞がれた。そして、七海の舌が入り込んでくる。
「んっ、んん……」
 抵抗するが七海の力は強い。
 さらに、パジャマの上から胸を触られる。ブラは着けていない。普段でも要らないくらいなので寝る前には外していた。パジャマの下にはキャミソールを着ているだけだ。
 七海に触られているうちに乳首が硬くなり自分でも驚いてしまう。成長途中の胸を触られて鈍い痛みが起きるが、その中に何とも言えない体が熱くなる感覚がある。
 七海は強く摘んだかと思うと、慰めるかのように優しく揉んでくる。すると、ジンジン痺れた後にほわーっと気持ち良さが広がる。
 両脚の間に七海の脚が割り込み脚を開かされる。そしてパジャマの上から大切な場所を触られた。
「あっ。そこはダメです。やめてください」
 綾乃は七海の手を何とかしようと思うが、七海に両手を掴まれていて手をどかせられない。
 七海の手が優しく、ゆっくり上下に動く。
 同性に性器を触られる感触に、おぞましさと同時に寒気に似た感覚が背中を走る。
 何も感じないはずなのに大切な部分がピリピリしてくる。
「やっ。いやです。やめて……」
 綾乃は体をよじって逃げようとするが、七海の手はしつこく追いかけてくる。
「どう、気持ちいいでしょ」
 七海に耳元でささやきかけられると、それだけで体がゾクゾクしてくる。
「そんなことないです。何も感じません」
 強気に答えるが、それとは裏腹に体のほうはどんどん熱くなってきていた。
 息が荒くなり、触られている所を中心に今まで経験した事の無い感じがしていた。どうして良いか分からず、大きな声で叫んで、逃げ出したくなる。
「だんだん、気持ち良くなってきたでしょ。ここはもっと気持ちいいよ」
 そういうと、七海の指が綾乃の核を捉えた。
 小さく円を描くように布越しに撫でてくる。
(んっ……)
 綾乃は声が出そうになるのを何とか飲み込んだ。
 今まで一番大きな痛気持ちいい快感がツーンと体の中を走り抜けた。
 思わず、体に力が入り、手脚を突っ張ってしまう。
「んふっ、気持ちいいみたいね。もっと、気持ち良くしてあげるから」
 そう言うと七海はほんの少しだけ指の力を強くした。そして、体の半分を重ねるようにして、綾乃の胸と自分の胸をこすり合わせる。おまけに耳の周りへチュッ、チュッとキスをしたり、ペロペロ舐めてきた。
 経験のほとんど無い綾乃はそれだけで、訳が分からなくなってしまう。
 成長途中の胸からはズキンズキンと痛みと快感が湧き上がり、耳からはくすぐったさとゾクゾクした快感が混ざったものが発生している。
 七海に触られている核はどんどん快感を増し、体の一番深いところが疼き始める。
「や、やめて、お願いです」
 綾乃は七海にそれだけ言うのが精一杯だ。どんどん思考力が奪われていく。もう、どうして良いか分からない。
「綾乃の感じてる顔、可愛い」
 七海はなおも指を動かし続け、綾乃を追い込んでいく。
 綾乃は初めての経験に自分の感情をコントロールできない。同性に触られて感じるなんておかしい。感じたらいけない。そう思っていても、体は一向に言うことを聞いてくれない。
 体の奥が熱い。何か得体の知れない感覚が体の中を這い登ってくる。
「もう、もう、やめて、やめてください。変なんです。体が変なんです」
「それでいいの。それが感じるってこと。綾乃は結構敏感だね」
 七海が綾乃の手を離し、胸を揉み始めた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あ、あ、あ、あ、ああああああ……」
 綾乃は手が自由になったことも気付かず、もうひたすらあえぐだけだ。
「綾乃は感じてる声も可愛いね」
 七海の声がすぐ近くで聞こえた。
 綾乃は頭がおかしくなりそうだった。体は爆発しそうだし、お漏らししてしまいそう感覚もある。体中が熱く、痺れるような感覚もある。
 七海に押し潰されている乳房は痛みが心地良くなってしまっている。初めてのことばかりで、本当に訳が分からなくなっていた。
 その時七海が空いている綾乃の胸の先をつまんだ。そして、そのままクリクリと捏ねた。
「んんんんーーっ」
 胸から今まで味わったことのない快感が湧き上がる。痛いけど気持ちいい。もっとつねって、そう言いたくなるような快感だ。
 綾乃の体が震える。全身が痙攣しているかのようにガクガク震えてしまう。もう、何も考えられなかった。
 ただただ快感の波に流され溺れていた。
(何か来る……)
 本能が告げるその予感の後、最後にとびきり大きなものが体の中を走り抜けた。頭の中が真っ白になる。
「あっ……」
 綾乃の頭の中で何かが爆発した。全身が痺れる。
 手脚を突っ張り、背中を大きく反らしている。体に力が入っている。
 それは小さいけれど綾乃の初めての絶頂だった。

 綾乃が我に返ると、七海がニコニコしながら自分を見ていた。
 綾乃ははしたない顔を見られていたことに気付き、急にどうしようもないほど恥ずかしくなった。
「帰ります」
 それだけ言うと、綾乃は七海の部屋を飛び出し、自分の部屋へ戻った。
 まだ体が熱い。鏡で顔を見ると真っ赤になっている。
 お腹から腰にかけて、ざわざわしている。自分の体があれほど感じるとは自分でも信じられない。
(私って本当はエッチな女の子なの……)
 その日綾乃はなかなか寝付けなかった。

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